バトルロイヤル その16
この村の近くにある山には古今東西の墓が揃った墓地がある。その墓地は山の中腹ある洞窟を進んだ先だ。
大人達が言うにはその墓場にご先祖様とご先祖様に付き従った従魔の亡骸が眠っているだとよ。武器や宝飾品の遺品は一部は生活の為に子孫が持って行ったが、大半は各自の墓に亡骸と共に埋葬されているらしい。
俺達も大人になったら墓を暴いてご先祖様が使っていた武器を持って探索者になるんだ……って計画立ててたんだがな、山に続く道を管理してる一家の奴がこう口を挟んできたんだ。
「あの墓場は"ハカモリ様"が守護する領域。だから墓荒らしに見えるような行動をしたら殺されちゃうよ」
馬鹿馬鹿しい話だろ?今まで親に連れられて何回墓を掃除しに行ったと思ってんだよ。
そうじゃなくても俺達だって従魔師としてそれなりに戦えるんだぜ?この計画に賛同してくれる頼もしい大人の兄ちゃん達だって居る、墓守をしてるだけの魔物を倒すぐらいどうってことないんだ。
その大人の兄ちゃん達もハカモリ様って魔物の話は一度も聞いたことが無いって言ってる。こいつの家は何かにつけてアレはダメ、コレもダメとうるさいってじいちゃん達も言ってた。仕事以外は噓つきの家系だって。
だけど、コイツは今まで俺達に嘘をついてきた事はない。もしかしたらコイツの親達が嘘をコイツに教えていたのかもしれない。でも情報があった以上は確認はしておくべきだろ?
多数決で墓場に肝試しとして、様子を見に行くことにしたんだ。
一人や二人で行動して行方不明になるなんて事が無い様に全員まとまって向かう。自分達の親には近所の兄ちゃん達と一緒に墓参りに行ってくると伝えようと決まった。
んで、三人程親に墓場に近づくなって言われたが一緒に行ってくれる兄ちゃん達を見て息子をお願いしますとか挨拶して許可されたらしい。まあ、俺は家で持ち出して大丈夫な武器になりそうな物を探して来たから集合場所に着いたのが一番最後だったんだよ。だから許可がどうたらは聞いた話だ。
どうだこうだの前置きは俺に残された時間が少なくなってきたので省く。
"ハカモリ様"ってのは実在した。今の俺は従魔の御蔭で村に戻ってこれただけの死者だ。
バカがやらかしてハカモリ様がお怒りになられた……っぽいんだよな。墓の周りに生えてた雑草を引き抜いた反動で尻もちをついた奴がいる。ソイツが木でできた十字架を一つ背中でへし折ってしまった。
ソレが条件だったのかは分からない。だけど人の形をした何かが現れた。多分この人の形をしてる奴が"ハカモリ様"なんだろうと俺達は何も言わずに理解した。
墓を荒らしてしまった状態で出てくる奴が墓守以外の何かだったら"ハカモリ様"ってのはなんなんだよってなるからな。
"ハカモリ様"は多分"墓守様"って呼ばれてた土着のナニカが訛った呼び名なんだと思う。
最後にこの手記を読んだ奴が居たら頼みがある。
"ハカモリ様"を倒して欲しい。
俺の友達だった奴ら、将来の仲間だった兄ちゃん達、そして俺自身が"ハカモリ様"に魂を囚われている事だろう。
まあ、俺自身がどうなっているかは憶測でしかないが、アイツらは"ハカモリ様"に魂を捕らえられて肉体は墓に埋められた。
アイツらの魂を"ハカモリ様"から開放してやってくれ。
この村、"ハカモリ様"の呪いで滅ばねぇよな?




