貢献イベント20
「里長殿、助力の礼が遅くなり申し訳ありません」
「いえいえ、あの戦いにおいて我らケットシーがおらずともあなた方は勝利を納めていたでしょう。我らはその手助けをほんの少しだけしたに過ぎません。それに礼であれば勝利祝いの宴会にて頂きましたから」
強制帰還三時間前、ケットシーの集落里長の家にて貢物をしている奴がいる。我のことだけど。
「この手土産はありがたいですね。特に保存食となるレシピに関してですが」
「台所や普段の様子を見させていただきましたが、非常時の備えが不十分かと思いましたのでご用意しました」
「御慧眼ですね。知識とは無形の財ですからそれを本という形でお譲りいただけるだけでもありがたいことです」
「次に来た時には様変わりしていそうですね」
「ええ、一部の物はドワーフの方に協力をお願いして発展を遂げていますよ」
人族の限界を49レベルも超えて肉球の御方は貫禄が違い過ぎる。
あの逃げられた魔族にだって致命傷を与えて生還するという確信を我に与える凄みがあるぐらいだからな。
称号に『長靴を履いた猫』があって、レベルが高い事以外に特筆すべき内容が何もないありふれたステータスしてるのに油断ができない恐ろしさを感じる。前回の来訪時に視させてもらったが、知っているからこそ恐怖を感じることもあるのだよ。
「唐突な話になってしまいますが、この集落に居る若いケットシーを何名かを連れて行ってはもらえませんでしょうか?」
「と言いますと?」
「実は他の世界に行きたいと申し出る者たちが居ましてな。その者らには危険性を説いて抑えてはいるのですが、いづれ私の静止を無視してでも出て行きかねないと危惧しているのですよ」
「少しでも見知った存在に預けたいということですね?」
「ええ、お願いできないでしょうか?」
「少々お待ちください。前向きに検討しますが、連れて帰る方法がなければこの問答も無意味になりますので」
「はい」
まず帰還時の転移に便乗する。これは来るときにサライで試してダメだったのでおそらく無理だろう。
次に自前で転移させる。これも出来そうに見えて世界を超えるほどの転移ともなると使える術式も限られてしまい、現状不可能となっている。門の創造に関してもどう計算しようが魔力が不足するとアルアジフが算出済みだからな。他のシステムも別の世界まで他者を転移可能な技はない。
ともなると、アレしかなくなるな。
「条件が一つできました」
「お聞かせ願えますかな?」
「連れて行く者は我が眷属となっていただく必要があります」
「なるほど……希望した者達にその事を伝え、それでもなお希望するのであれば引き受けてくださるのですね?」
「はい。引き受けますよ。そして仕事もこちらで用意可能です」
「では伝えてまります」
「荷造りされればこちらで荷物は運びますので」
どの猫種が来るのかは未知数だが、ケットシーが商会のメンバーになる可能性が出て来た。それだけでありがたいな。
貢献イベント編 これにて終了です
貢献イベントで得たアレコレを整理する話を挟んで次の中長編の内容も決まってますが、データベースの作成(主に職業系)の完成を優先させようかなと思っています