貢献イベント18
「我が主」
「クロエか。筋肉痛で動けないからほっといてくれ」
嘘である。拠点に用意された自室のソファーベッドで横になってアイマスクをしているが、筋肉痛で動けない訳ではない。
どちらかというと村正からの制裁が原因だからな。
「隣接している村の村長が起こしになられたのですが追い返した方がよろしいですか?」
「用件は?」
「魔物の討伐の礼だそうです」
「不要だ。宴会に村の者が混ざっていたがその費用もこちらに請求してくれて構わないと伝えてくれ」
「かしこまりました」
もうそろそろ帰還の頃合いになるのか。そうなると、この建物はこっちに残して戻ってこれなかった場合は倉庫代わりに使用してもらう旨を記した手紙の用意と我だけでも来れる様に魔法陣の設置もやらないとな。
「……無理矢理動こうと思えば動けるのがまたいやらしい点だな」
◆ □ ◆ □ ◆
「主様、人目につかない地下室だからと床への落書きを見逃す理由にはなりませんよ?」
「……7号、コレの意味が分からないのか?」
「いえ、分かりますよ。転移の術式が組み込まれた魔法陣です」
「ヨグ様の神域経由ならこっちに戻ってこれるだろうからな。その確率を上げる為の補助に使用するから消すなよ?」
「もちろんです」
手紙の用意は髭に投げてきた。アイツ書き慣れているからな。
アルアジフに用意してもらった専用の陣を床に書き写している訳だが……ナニコレ難易度高すぎんだろ。
「アルアジフ、あと頼めるか?」
《かしこまりました》
「7号真面目な相談がある」
「何なりとお申し付けください」
「冒険世界に戻ったら何をやりたい?」
「職業選択の自由があると認識してよろしいのですか?」
「大雑把にはな。ただ、出稼ぎに行くとか管理下に置きにくい内容は却下させてもらうぞ」
ショゴス達もロードに至った以上はある程度人として扱うべき存在になっている。下剋上を起こされたら面倒くさいからな。
実際、クトゥルフ神話においてショゴスの創造主たる種族はショゴスを奴隷として扱い過ぎたので反逆を起こされて滅亡したとされる。
二の轍を踏む趣味はない。
「アイリス様の元で勉強をさせていただけるとありがたいです」
「許可する。ついでにアイリスの食事管理も頼む。とあるタレコミによると食事をせずに作業を強行し続けた為に餓死で死に戻りしたらしいからな」
「かしこまりました」
「4号と11号以外のショゴスにもこの確認をしておいてくれ。4号には悪いがやってもらいたい仕事がある。それと11号は既にこちらで聞いているからな」
「主様に仕事を決めて欲しいと望むのもアリでしょうか?」
「ああ、望まれたらやれそうな仕事を割り振るさ」
4号に拒否されたら5号か6号に頼まないといけないから通るといいのだがな。神話生物等危険存在隔離教育施設の教官役を頼むとなると実力と知性の両方を求められるから人選が面倒くさいのだよ。