プロローグ
初めて書きます。
右も左も良くわかっておりません。
見切り発車気味ではあるので不定期に更新します。
書きたいものを書いていければと思います。
『アイリス、私のかわいい娘。誰が何と言おうと、あなたは私たちの希望よ...』
これは走馬灯だ。
私の中にある数少ない幸せな記憶。
大好きなお母様。
でも、私を“希望”と言ってくれたその人はもういない。
「あれがヴェルディ家の“悪魔”か」
「髪なんてまるで老婆じゃない」
「ほんと気味悪いわ」
そんな蔑む言葉や視線が投げ掛けられるなか、私は重い体を引きずりながら一歩一歩階段を上っていく。
まともにご飯を食べておらず、上手く力が入らない。そんな私に苛立ちを覚えた処刑人が、私の鎖を強く引いた。
その勢いでバランスを崩し思わず前に倒れこんでしまう。
しかし、幸いにもそこは上りきった平らなところであったため、階段の角で頭を打ったりしなくて良かったと内心ほっとした。
体を起こし、下を見下ろす。
そこに広がるのはたくさんの人の群れ。
その中には私の父、兄、そして義理の妹の姿もあった。
いつも私を幽霊のようにいないものとして扱ってきた人達。
どれだけ愛されようと努力をしても見向きもしてくれなかった人達。
私の居場所はどこにもなかった。
だから、初めてこんなにもたくさんの人の目に晒されることに少しの緊張を覚えた。
どうして、こんなことになってしまったのか。
ある日突然騎士に取り押さえられ、身に覚えのない罪を次々と着せられ、あれよあれよという間に死刑が決まってしまった。
どれだけ家族に『私はやっていない』と訴えかけても誰も聞く耳を持ってくれなかった。
そんな家族が私を軽蔑の眼差しで見つめている。
早く死ねと言わんばかりの目。
『どうしてお前のような化物が生まれてきてしまったのか』
『母様ではなく、お前が死ねば良かったのだ』
『ほんと気持ち悪い、さっさといなくなってよ』
膨大な魔力をもって産まれたせいで、母の命を奪ってしまった私に幾度となく投げ掛けられた言葉たち。
こんなにも私は皆に死を望まれている。
「アイリス・ヴェルディ。最後に何か言うことはあるか」
そう私に問いかけるのはこの国の皇太子である。
今さら何も言うことなどない。
言ったところでどうにもならないことだとわかっているから。
言葉にする代わりに、私はもう一度自分の家族だった人達がいる方へ視線を向ける。
それに気付いた義妹は体をこわばらせ、兄はその義妹をかばうようにして肩をだく。
父は更に深く眉間に皺を刻んだ。
もし私が人並み程度の魔力で、家族と似た容姿であれば私もあんな風に家族になれたのだろうか。
そんな淡い理想を抱いたこともあった。
...いや、例え私がどんな人物であれ、彼らにとっては要らない存在なのだ。
母さえいれば、私など要らないのだ。
これで良かった。ようやく楽になれる。
生きていたって死んでいるのと変わらない。
むしろ地獄のようなこの人生から抜け出せる良い機会なのだ。
自分の手で死ぬのは怖かった。
だから、これで良かったのだ。
...ごめんなさいお母様。私は皆の希望ではなかったです。愛される存在になれなくてごめんなさい。
無言のままの私にしびれを切らした皇太子が執行の合図を下す。
処刑人が振り下ろした剣が首を切り裂く瞬間、私は静かに目を閉じ祈った。
もう二度と目を覚ますことがないようにと____