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【珍獣はかく語りき ①閉園】

 ここは、兵庫県にある玉子動物園。

 1928年に開園され、もうすぐ創立百周年……のはずだったが、それを迎えることはできなかった。

 2024年の春に閉園することが決まっているからだ。


 玉子動物園には、かつてたくさんの動物が飼育されていた。

 少し前までは、日本国内で唯一、パンダとコアラを同時に見られる稀有(けう)な動物園として全国にも名を()せていた。

 しかし、コロナ禍による来客者の減少や、物価高の(あお)りを受け、経営難に(おちい)り、遂には閉園を余儀なくされた。


 この話を聞いたコアラである、わし銀仁朗(ぎんじろう)は、どこか申し訳ない気持ちになった。

 ご存知やろか? コアラの餌代(えさだい)が驚くほど高いとういことを。


 わしらはユーカリを主食にしていて、それ以外の物を殆ど食べない偏食家なんや。

 そんなわしらの為だけに、専用の農家さんが手間暇かけて育ててくれとるらしい。そのありがたみを知らず、ただ無心にむしゃむしゃと(むさぼ)ってるんが、わしらコアラの日常や。

 一頭あたりの年間の餌代は、なんと一千万円!!

 ……まぁ、それがどんだけ価値があるんか、わしは正直知らんけどな。


 昔はコアラの個体数も多く、わしらが暮らすコアラ館にもぎょーさんお客さんが来てくれよったから、餌代が高くても問題なかったんやろな。

 せやけど、最近になって友達や、わしの兄妹達が次々に死んでもうたんや。今やこの広いコアラ館にいるのは、わし一匹だけになってしもうた。


 飼育員の大川のおっちゃんから聞いた話やと、かつて動物園の目玉やったパンダも、一年くらい前に死んでもうたらしい。玉子動物園の集客の要やった二枚看板が、今やわし一匹……。


 そんな状況で、どんどん客足は遠のき、ついには閉園が決まってしもたゆう訳やな。

 残念やが、当然わしにできることは何もなかった。

 これからどうなるんやろかと考えてた矢先、何や見慣れん人間が大勢やって来た。園長の吉田(おう)と大川のおっちゃんらと何やら話し込んでいる。


 聞けば、リッテ製菓とか言う菓子屋の人間やったらしい。何やよーわからんけど、わしの飼育権を園から買い取ったとかとかなんとか。

 わし、どうなるんやろか……。とりあえず、寝よ。


 次に目を覚ましたとき、大川のおっちゃんに事情をわかりやすく説明してもらった。

 なんや『コアラのマッチョ』とかいう人気(ホンマに人気あんのかいなそんなけったいな名前で……)のお菓子のキャンペーンで、わしの飼育権を懸賞にするらしい。それに当たったら、わしを一般家庭で飼えるようになるらしいわ。

 ……えっ? それ、わし大丈夫なん??

 まぁ、はなからわしに選択肢はないんやろけど……。


 それより、大川のおっちゃんとの会話で、一つ解せんことがあった。

 園が潰れる訳やから、当然そこで働いてた人間たちも別の仕事を探さなあかんなるわな。大川のおっちゃんは玉子動物園からそない遠くない、淡路島とかいう場所にあるウェールズの丘とかいう動物園みたいなとこで働くことになったらしい。そこには、コアラが飼育されてるらしい。


 ……いや、可笑しくない⁉

 わしは知らん家に連れてかれるのに、大川のおっちゃんは、ちゃっかり別の動物園に行くとか可笑しくない⁉

 『わしも連れてってー』って、わしなりに最高のおねだりポーズで懇願してみたんやが、やはり答えは『アカン』やった。

 まぁ、結果はわかってたけどな。


 園長の吉田翁も、長年園を支えて続けてくれてたみたいやけど、歳には勝てんみたいで、限界っぽい。借金も結構(かさ)んどるらしく、わしの飼育権の譲渡で得た金も、その返済に充てるつもりみたいや。

 そんなこと聞いたら、これ以上わがまま言うわけにはいかんなるわな。

 しゃーない、なるようになれや。

 

 こうしてわしは、段ボールに入れられ、とある一般家庭へと宅配されることになったんや——。

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アニセカ小説大賞 一次選考通過作品
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