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50話※リュネ視点


 特に吸血鬼の項目を中心に調べる。

 ただでさえ分厚いのだから、読まなくていいところまで読みたくない。


 ちらっと読んだ限りでは、血を基に魔法を作り出す。

 主食は血液。

 主食先の魔力も吸ってしまう。だからこそ、魔力が増していく。


 魔物の血よりも神聖だという。

 そのため、人間の血を好んで食すという記載があった。

 随分過大評価している。ただ教会で魔力調査しただけだろうに。


 生後間もなくは全く魔力を持たない。しかし、母親の乳で魔力を流して成長する。牙が生えてからやっと吸血を行う。それ以降は他から奪うことで莫大な力を蓄えられる、と。どうやら餌とする者の魔力はもちろん、餌が会得している魔法も覚えるらしい。


 とにかく、食と魔力に関してのつながりがあるということか。

 どちらにしろ、苦労して開発した人間側の魔法がさっくり習得されるのなら嫌われるわけだ。




 ……。

 しかし私は……?

 幼少に乳を貰ったわけでも、人間から吸血したわけでもない。

 つまり私は竜から力を奪っている、という解釈になるのか? 元々人間だし……いや、吸血鬼が好んで人間を吸血鬼化もするようだし……そういう記述は――あった。


 ――眷属、となってしまうようだ。

 地方によってグールやゾンビとも言われるらしい。

 死んではいないが、微量ながら持っていた魔力を失ったから、その慣れ果てだというこの本の筆者の考えのようだ。


 今の竜たちも素の攻撃力はあるが、元の魔力はない状態なのだろうか?

 まあ、私の竜たちが咆哮を打つのも見たことないしな。


 それと、人の魔法を使うようになるということは私は竜の力が使えるということになる。……自分に当てはめるのがめんどくさくなってきた。大事なことではあると慣れない活字に向き合う。



 

 現在彼らはここからダンジョンの方に抜けて、更に北上したところに生息している。

 町はコロニーと呼ばれている。それぞれ町は要塞になっていて光を完全に遮っているという。


 そして、彼らにも王がいる……。

 大半が永遠の夜の街に住んでいるにもかかわらず、王だけは陽の上がるときだけ活動できるらしい。

 ……これは普通の人間と同じか。

 赤水ちかくの古城に住んでいる。使用人などはおらず、完全に一人。この筆者もわざわざ訪れたということか。


 想像以上に特殊な吸血鬼らしい。私でも昼は無理だ。

 もしかしたら、`食事`も普通の吸血鬼たちとは違うのかもしれない。


 小さなコミュニティかと思ったらそうでもないようだ。

 行ってみる価値はありそうだ。


 ……とにかく天然の吸血鬼の生態はある程度わかった。



 竜の生態とアラスター・エルバトロンの本はもう一度部屋でじっくり読むとしよう。

 そして、もし次に私を襲ってきた奴に色々と試してみよう。

 満足して本を閉じた。


 うんと背伸びする。


「はあ……」


 座学は大事だと思うが、苦手だ。

 既に外は白け始めていた。兵士には申し訳ないことをした。しかし、カウンターを見ると彼もスヤスヤだった。

 ふ、と気と集中力が切れる。

 戦闘より疲れた。


 あの子が帰ってくる前に帰ろう。

 兵士を揺すり起こす。



「すまなかったな」

「い、いえ。失礼しました。このことは内密に……」

「ふふ、」

「リュネ様、軍にはいつ戻られるのですか?」



 ダンジョンで一時離脱していた騎士団。

 それにいつ戻るか、と問われた。本当ならダンジョン攻略後、帰還して騎士として勤めていたはずだ。

 多少なりとも手塩に育てた騎士もいる。

 ――が、案外寂しさも愛着も自らにないことに驚いた。戦地も共有したし、私は亡命でここにあった……はず。もう人間の心がなくなってきたのだろうか。


 困惑を諭されないように息を吐く。

 一呼吸置いて、その旨を伝えた。



「もう戻ることはないよ」

「寂しくなりますね」

「そういってくれると有難いな。まあ頑張ってくれ」

「ええ、ありがとうございます」



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