49話※リュネ視点
赤水は数百年、千年前に染まった。
山から流れる水はまだ綺麗。
その赤水には生物という生物はいない。
だからこそ、故郷はなにも食料が採れなかったわけだが……。
魔王がエルバトロンだとしても、あの子と魔王と赤水がどう繋がるのか。
ページを捲ってもそれらしいものはない。
「ふう」
一度気分を変えて初心者向けの魔法の書物でも見るか。
私の能力に合うものがあるのか。
吸血鬼初心者の本……とかでもあればな。人知れず笑う。
立ち上がり、再び本棚へ。
厚いものではないものを選ぶ。
――火に水、雷。……基本から学ぶ、という感じか。
自然にあるものから魔法が生まれていった。そして、それ以外の派生魔法はエルバトロンのような魔術師たちが開発していって今、皆が使っているようだ。
魔物たちの魔法はまた別物、らしい。
実際、吸血鬼以外も亜人――エルフや獣人など、いることはいる。
しかし、神聖なる人の魔法と違うとか、不浄な魔法とまで書かれている。だからこそ、彼らは迫害をうけている……そう書かれていた。
神聖か。
適性の魔法、力を表す水晶がある。
魔力を示してもくれるのである程度の力量がわかる。
魔術師志望はそれを受ける必要があった。
そして、基本はそれを基準に魔法を使う。
神聖だとかいうのは、教会で、神の像の御前での儀式めいたものだからそう言っているだけだろう。
この国はもちろん。
我が故郷でも、他国でも同様に行われているらしい。――これは留学した者から聞いただけだが……とにかく、その違いだけだろう。
神に授かったようなものだから、神聖。
それ以外は悪しきものの魔法。
分かりやすい。
私も儀式はやったことは、ある。
魔力は殆どなかったことだけ覚えている。だからこそ、騎士になったわけだが、それはいい。
どちらにしろ私は人間向けの魔法は無理かな。これでいうところの悪しきものの魔法らしい。
であれば、魔物や亜人の魔法の研究をした学者なんて山ほどいる。
幸いここは王立図書館だ。山ほどあるだろう。
椅子から立ち上がって、本を戻しながら探す。
奥の方に鎮座していた。
しかも大量に。そして分厚い。
――これを読むのか……。
いや、自分の能力を、吸血鬼のことを知らなければな。




