48話※リュネ視点
王立図書館は幸いにもまだ開いていた。
一部が暗くなっているが……、昼に来れるとも思えないからな。
と、恐る恐る入っていく。
明かりのついているカウンターの人間がこちらを見る。
「すみません。そろそろ閉店……あ、リュネ様」
「すまん、すぐに出る」
「大丈夫です。王から言伝ておりますので、どうぞ。明かりをつけますね」
「いや、いい」
どうやら先にアルトが先手を打っていたらしい。
それなら問題ないか。
残業になってしまうのも忍びない。目的の物を持って貸してもらおう。
私はあまりここへは立ち寄らなかった。
しかし種類別に名札が本棚についている。これなら迷うことなく調べられるだろう。
夜目が効くので暗い方が探しやすい。
カウンターの前の長机を進んで本棚へと進む。
とりあえずは歴史書か。
それと魔法書。
魔術師一覧……血の水……。
吸血鬼のものもあるだろうか。
適当に手に取って、目次を確認していく。気になるものがあればそのまま腕に抱えた。
10冊ほど借りる。
これで有益な情報が一つでもあれば御の字だ。
魔王やあの子の感じを見るに古い時代のはず。
再びカウンターに戻る。
その前の長机に本を置く。
「後は私が王に伝えておくから、帰って構わない」
電気も消してて構わない。
そう伝えるとどこかに連絡していた。
灯りがない中本を読もうとしているのだから、訝しむのも無理はない。
くるりと踵を返して、椅子に座る。
ぺらぺら関心の無いページをめくる。
しばらくすると職員の代わりに兵が入ってきた。
見知った人間だ。
手配が早いのは多分私が夜通しするなら連絡しろとでも先に言われていたのだろう。
ちょっとけがをしているのは私が差し向けた竜たちのせいだろう。割かし平穏だから良い訓練にでもなったはず。と、自分のしたことを棚に上げる。
薄暗い中、兵が代わりにカウンターへ。
すれ違いざまに頭を下げる。
見知った人間だ。
職員に悪いと思っていたので、これで安心して調べ物ができる。それならここで調べてしまおう。気になる本はしばらく借りよう。
すでにページを捲っているのは魔術師の歴史、一覧に関してのもの。
これほど多くの魔術師がいたことに驚きだ。
もちろん、この国以外の人間も入っているだろうが……。
どうやら回復魔法だけで本にまで載るらしい。
私自身本もあまり読まないし、魔法に関しては疎いから知らなかっただけというのが正しいか。今となっては魔法も使っているため、目的のページ以外も興味が湧いてしまう。といっても、私のそれが魔法と呼べるのかはわからない。
……折角だ。
あとで魔法初心者向けのものも見てみるか。
流してページを捲る。
魔法に関しての記述は面白い。
しかし、それといった人物は見つからない。
あの子のことも何かと思ったが……。
――アラスター・エルバトロン。
閉じようとしたところその魔術師が目に留まった。
すべての魔法の父。
流石に数百年くらい前らしいし、違う気がするが、どうしても目に留まった。
詳しく読み解くと、空間魔法、身体に封じる術。
新たに生命を創る法。
炎や水などを、更に別の物に変える錬金。薬剤からの魔法。
……などなど、魔法の概念を根本から変えた人物らしい。どうやら魔法の開発に長けた人物らしいことはわかった。
とんでもない者だな。
しかしあの子以上の者なら……。
例えばこれが魔王なら。
すべての魔法は魔王に教えてもらったとも言っていた……気がする。
それなら、とは思う。
赤水に代わったのも数百年前。
偶然か。私の感でしかないが……アラスター・エルバトロンという者の仕業なら合わないこともない。




