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47話※リュネ視点


 夜になるまでごろごろしていた。

 あの子は帰っていなかった。

 一瞬焦ったが、メモ書きがドレッサーに置いてあるのが見えた。意外と長文だ。


『王と喋ってくるから、多分王宮で寝る。

 リュネの寝顔を鑑賞できないのは不服だ』


 これ以下は愛を囁いていた。


 字、下手くそなんだな。

 大丈夫か?

 私より怒っていたはずだが……。


 色々心配だが、何かあれば竜でも飛ばせばいい。


 最初は彼女のように空間魔法で別次元にいるのかと思ったがどうも違うらしい。

 竜たちは私の血で現れたり、致死は庇ってくれる残機のようになっているようだ。

 元々そういう吸血鬼的な能力が備わっているのかそれもわからない。


 その辺りの情報も手に入れたいところだ。


 メモ紙の横に置いてあった数本の瓶。

 その中の赤い液体をグラスに注ぐ。

 

 血はちゃんと用意してくれていた。

 それを飲んで一日ぶりに外へ出る。



 勝手知ったる町ではある。しかし夜はここまで静かなのだな。

 治安がいいということでもあるか。

 衛兵の仕事も減っていく一方だな。


 


 人通りもなくなっていく。石畳を歩く自分の足音だけが響く。


 

 ヒーラーとしてついてきていた女はどこに行ったのか。

 私を奇襲したのも二人だけだった。そもそも、身元もしっかりしていたのは魔術師と武闘家だけだ。

 また襲われるのも癪だ。

 これは後でアルトを詰めよう。


 昨夜の臣下達への復讐は心残りがあった。

 それでも同じ過ちをしてほしくないというあの子の声がずっと心に残っている。

 今まで静止も躊躇もなかった。

 気にもしていなかったのにな。


 必死に私にすがる姿が刺さる。

 ……これからずっと引きずりそうだ。


 頭を掻く。



「はあ……」



 一目ぼれだとか言っていた告白にも驚いた。

 回答はしていなかったな。まだする気もない。

 返事をしてしまうとあの子がいなくなってしまう可能性があると思ってしまう。だから、このままでもいい気がしてしまうのだ。



 ここまで悩むとはな……。

 私も気にしているということか……?



 いや、感謝もある。

 人性、感情がなくなることがない。


 まだ、人のままでいられる。それは彼女のおかげだと考えている。

 いつか魔王のようになるのではと感じている。

 事実、バケモノのように動く自分に恐れおののいてしまう。




 ――名前さえ、分かれば……。

 いっそ私が付けるか?


 

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