42話
朝。
いや、昼か。
忙しなく馬車でホテルに移動して、一室へと案内された。どうやら王族が運営するホテルらしい。
だから、手配が早かったのだな。
しゃーとカーテンを開ける。
昨日は疲れと安心ですぐに寝てしまって、見ることはなかった客室。金の装飾と豪華なカーペットが敷かれていた。
妾とリュネのベッドは別。
しかし、それぞれ一人でも広いものだった。しかも天蓋付き。王女様雰囲気を味わえた。
これで使用人がいるならもう王族だ。
もしかしたらここは、外交官とか外から来る要人のための部屋でもあるのかもしれない。
寝室を出て、広すぎる客室で一人キョロキョロする。
それにしても、夜の。街についてからの1日の。
あの騒動が嘘のように街は穏やかだ。
――陽日も悪くない。
とぽかぽかなちょうどよい、昼の陽気なそれに再び眠気を誘われそうになる。
リュネはまだくるまっている。
なんなら天蓋を全締め。
昨夜はお楽しみでしたね、ではないことが残念。
だからこそカーテン全開にできる。このあたたかさをリュネが知ることも無くなってしまった。ほぼ妾のせいでもあるのだけれど。
とにかくリュネの申し訳程度の復讐も終わった……はず。リュネとしては満足していないかもしれない。
でも、昨日のホテルの道中。
ライトの下のリュネはさっぱりしていた。
肩の荷が降りたような。
吹っ切れたような。そんな表情だった。
もしかしたら、王のことが気がかりだったのかもしれない。一応友、だと言っていた。
内々のことがあるとはいえ、仕打ちが仕打ちだから妾としては理解し難い。
リュネがすやすやの間に、ちゃんと街中を見れなかったからこっそりみていこう。何ならデートの下見をしよう。
いそいそと着替えてそろりとドアを開ける。
リュネ用の‘料理’を置いておくのを忘れずに。
ちょっと迷いながらホテルのフロントへと降りる。フロント――ホテルの出入り口にはこの国の兵士がいた。
警備員かもしれない。
王族の営むところだから。
そう思いすれ違う。すれ違う前に警備員に声をかけられた。
「あの……リュネ様の奥様ですね?」
――お く さ ま。
「うむ、そうだが?」と即答する。
「王から外出の際も付いてくる様にと令が出ております。後ろからついていくことをお許しください」
「何かあったのか?」
妾も渦中の者だが、ちょっとすっとぼけて尋ねてみる。兵士によれば、黒魔術を使って大臣たちが反乱を起こした――ということで、兵士たちには伝わっているらしい。
なるほど。
それなら妾たちを疑うヤツはいなくなる。
それにリュネもここの国の兵士だったし、こちらのことはそれで解決だ。




