表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/57

39話


 王座の後ろは割れたステンドグラス。

 なんの模様があったかさえ覚えていない。

 残骸をパチパチと踏み鳴らす。

 

 その開けた外ーー夜空に向かってリュネはピューと口笛を吹いた。


 王はリュネのすることに興味があるらしい。


 壊れた王座に凭れて、様子を伺う。

 久しぶりに会った友人が魔法を使えるようになっているのだから、そりゃあ、気になるだろうな。

 逆に妾はどうなるか察しているので、ちょっと見栄を張りたくなる。


 しばらくして暗闇からギイギイと鳴き声が聞こえてきた。

 真っ暗で何が来ているかは、きっと常人ならわからない。妾はなんとなく察していた。


 キラキラと星以外が煌めくのが見える。

 そしてヒュと、塔と塔の間を突き抜けて星が落ちてきた。


 真っ黒な影はそのまま城内を蛇行する。


 姿が見えなくなってから、悲鳴が聞こえた。

 それを皮切りに空が落ちていく。

 飛竜たちだ。


 城壁を襲わせた飛竜たちをこちらにけしかけたのだろう。

 堕ちていく数はまあまあいた。


 城壁ではどういう攻防が起こったのかはわからないし、物理がきかないわけでもない。

 しかしリュネが倒れない限り、ゾンビみたいに倒れても起き上がるだろう竜たち。兵たちには少々難しい相手だったろう。

 

 一体の竜がリュネに褒められたいのか、こちらに留まる。

 これでやっと目視できた。

 光で卑しく照らされる巨体。

 以前リュネに襲われた傷が生々しく残っている。


 妾はリュネに殺人はしてほしくないが、竜に襲わせるのは捕食と思っている。

 我ながら虫がいい話だ。


「ほう」と感嘆の声が聞こえてきた。


 そして、訝しげに妾とリュネを見て、「リュネ……お前は」と困惑し始めた。


 妾が先ほど長ったらしく垂れた文句。全部偽りだとでも思っていたのだろうか。

 リュネが一度死んだということは伝えたことは伝えた。本当に死んでいたとは思わなかったのだろう。


 竜を撫でる手を止めて王を振り返る。

 リュネが改めてどういうふうに説明しようか迷っていた。

 代わりに勝ち誇った妾が説明する。



「言ったろう。お主が捨てたから妾が惚れ込んで拾っただけだ」

「惚れ薬でも盛られたのか……」

「違う! そんな一時的なものに頼る妾ではない。妾が看病していたらリュネが惚れてくれたのだ」



 ふふふと妾はうっとりする。

 まさかという分からずやの王に何度行っても理解してくれない。リュネも「違うな……」と王と妾の熱い弁論に訂正しようとする。

 確かに妾は惚れ込んでいるのだから、全部正しい。妾は割と正直者だ。

 惚れ薬というのがまた不愉快だ。

 ちゃんと告白して同行デートまでしている。

 なんなら野営で同衾した。


 それを包み隠さず伝えてやる。

 王はチラッとリュネを見る。本当か? と問うてる顔だ。

 いやいや、違うことはない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ