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34話

 それはそうとリュネもおかしな話だ。

 故郷に対して特別な感情を持っていないなんて。

 普通は身内や生まれた家や土地を特別視する。景観なんてそこだけのものだ。

 こんな感じで望郷を想うだろうに。ーーこれは本の中の物語や詩歌からの受け売りだが。ここまで書物があるなら普通は故郷を重んじるはず。


 リュネに聞いてはなしてくれるか。


「何か言ったらどうだ」


 と声がかかる。

 リュネが返答しないからか痺れを切らして返事の催促をする。

 残念そうな。

 俯いていることと上からの光のせいで王の表情は見えない。



「城壁で騒ぎにでもなったか」



 やっとリュネが口を開いた。

 煽り返しているようで、自分の所業を明かしてしまっている。バレてもそれは問題ないのだろう。


 視界としている妖精の妾が反応する。

 自分で言うのもおかしいが即反応する辺りが妾みたい。リュネも一瞬こちらを一瞥して微かに微笑む。



「……お前の仕業か。魔物を手懐けたのか。それとも、あの魔女か」



 王がそれを問う。リュネの隣にいる妖精ーー妾と目が合う。

 妖精が魔物を寄越したとでも思っているのだろう。

 実際はリュネがグール竜たちを連れているのだが……。リュネが人外ということを知られていないのなら、こちらに分がある。


 王のそれも驚いている声音に見えない。

 むしろ嬉しそうで。感心している風にも見えた。

 

 動揺をうまく隠しているのだろう。



「まだ人は揃っていないし、折角だ。与太話でもーー」



 今ここが手薄な内に一太刀浴びせて退散するつもりであるリュネ。早速とばかりに王が話している間に剣を振るう。


 妖精も離れていく。

 妾は所謂高みの見物の立場になってしまっている。

 妖精は魔法出力できるものでない。本当にただ見るだけしかできないが、今のところは問題ないだろう。


 確かこの王に奉戴されたものだったか。

 王座の背凭れ部分がスッパリと切れた。

 綺麗に切れたなあ。



 あの剣はずっと手入れをしてはいないはず。

 リュネの血を塗るだけで高火力。まだまだわかっていないのだろうことはリュネの無表情な顔ではなく、目を見ればわかる。

 早く加減を学ばないとな。

 振るった遠心力で塗った血が遠くにぼたりと落ちていく。


 向こうもちゃっかり躱している。

 書類を王座横の丸い机に置いて、するりと細身の剣を抜く。白を基調とした服装と銀髪が夕方よりも暗い場所で存在感を放つ。


 綺麗な赤いカーペットに佇む王。

 その頬にリュネの血が滴る。

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