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32話


 

 お互い思い出しつつ城のてっぺんに辿り着く。

 

 王城の前も夕暮れ時と違ってもう人気はない。

 静かなものだ。

 真っ白な建物は月明かりに照らされて陽のある時の偉大さとは違って妖艶ささえ感じられる。


 警備兵も下から見る限りだといないように見受けられる。城壁の方に人をやっているのかもしれない。リュネの陽動がうまくいったようでホッとする。



「ほれ、このステンドグラス……あの王座の後ろにあったやつだろ」

「ありがとう」

 


 天井ではなく、ステンドグラスのあたりの少しばかりの足場にリュネは降り立つ。

 リュネがお礼を言う。

 なんだか最後みたいで縁起が悪い。



「くれぐれも無茶はするなよ」

 


 瞳が少しだけ安心感を与えてくれた。

 リュネが建物側を向いてから、妾も箒を上昇させた。

 そして、こっそりと観るためだけの魔法を唱える。


 くるりと指を空で滑らせる。

 

 水の妖精――クリオネという生物の形のもの。

 出力、観る側は水晶。

 それぞれ具現化させた。


 水の魔法の一種で反射を元にしているとかどうとか説明していた気がする。……魔王が。

 

 水の妖精をリュネにこっそり付き纏わせる。

 肩か背中あたりならバレないだろう。




 グッと拳を握る。


 ――あとは事が始まるのみ。


 アルテミスという王と戦うために。

 準備が整うと妾はソワソワと空の上で待っているしかない。安心感は与えてもらった。それでも離れると不安が押し寄せる。


 ぐるぐると城の上を旋回する。

 これだけでソワソワが解消されることを祈って。


 ここまで歩いてきた道も、今となっては街も真っ暗だというのに、この城だけが存在しているみたいに煌々としていた。

 

 それはそうと先ほどのリュネの言葉だ。


 髪の云々であそこまで話を広げるのも恥ずかしい。リュネも気恥ずかしそうにしていたのだけは覚えている。だって妾も嬉しいやら恥ずかしいやらで……意識がふわついていたから。


 いつでも駆けつけられるように頭を振って、切り替える。甘々な妄想は終わった後でゆっくりしよう。


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