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30話


 空の闇に溶けていく翼竜を眺める。

 それにしても……まさか闇討ちがあるなんてな。


 戦闘という戦闘をしていなかったリュネとしては願ったり叶ったりか。ちょうど裏路地で建物の影ということもあってこの戦闘跡はしばらく誰にも発見されないだろう。

 運が良かったとも言うべきか。



「夜にまた行くか………闇討ちのお礼参りだ」

「ふむ!! 奇襲か。ワクワクするな! こういうのを血湧き肉躍るなどと言うのだろ?!」

「策という策はないが、強いて言うなら血を蒔いたのは見ただろあれを使う」

「え? あれは悔しさからというわけではなかったのか」



 謁見の最中。

 血を滲ませるくらいに拳を握っていた。

 あれは夜になってから、戦うつもりだったということか。てっきり屈辱を堪えていたとばかり思っていた。

 やはり妾だけが怒っていたじゃないか。


 

「なんだ」

「妾は怒っていたのだぞ」



 背中をバシッと叩く。

「痛い。何故叩く……」と反論があったが無視して話を促す。



「侮辱されていたから怒っていただけだ。さっさと先を話せ」



 とりあえずはこれでチャラにしてやろう。

 八つ当たりも含まれている。もう半分は王の奇襲の時にでも晴らしてやるつもりだ。



「で、どうするのだ?」と妾が問う。

 リュネが一息ついて話し始める。



「……君が飛んで私を連れていけばいい。昼間の謁見の間の場所は外からわかるか?」

「多分わかる」

「であれば頼む」



 妾はこう見えて建築に詳しい。

 己の元の城も作り変えた実績持ちだ。


 しかしリュネと相乗りか……。


 前は上手くかわしたが今回は無理だろうな。耐えられるだろうか。箒が、ではなく妾の心臓が。

 妾のその心情を知らずにリュネがさらに続ける。



「……あとは天蓋の硝子を割って入ればいい。君は屋外で待っててくれ」



 ということは妾は待機か。

 八つ当たりもできないとは。


 妾が足。失敗しても成功しても妾さえどうにか行動できるならまた機会もあることだろう。

 失敗したとしても、半不死であるリュネにそこまで不安はない。リュネもギリギリまで戦うのだろうことはなんとなくわかる。


 しかし妾の心が持たない。

 例えリュネが待ったをかけても満身創痍ならさっさと拾って逃げるつもりでいる。


 リュネが拒否しなければいいのだが……。

 その時はどうにか気絶させるか。

 うんうん。と、妾だけの作戦を立てているとリュネが話しかけてきた。



「何を考えている」

「い、いや?」



 明後日の方向を向く。

 向いたとて、リュネの瞳が妾を穿つ。

 そう見つめられては本当に穴が開く。


 逃走のことを考えていたので、ついうっかりリュネへの返事を忘れていた。

 リュネが不審がっている。



「私が良しというまで撤退はしないからな」と案の定釘を刺された。しっかり妾の考えがバレてしまっている。



「ぐぬぬ……」


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