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29話


 小突いた妾をリュネの瞳に射抜かれる。

 こうなっては何もいえない。

 結局リュネには逆らえず、昏睡している魔術師を抱えて武闘家の後ろ姿を見送った。



「これで良かったのか?」



 妾は良くないが、一応聞いてみる。


 リュネが案外奴らに対して優しいから。もっとこう……スカッとする倒し方や圧倒的な強さで屈服させてほしかった。

 おかげで妾の方が怒っている。

 モヤモヤだ。



「まあ、私も許したわけではないが……」



 一応妾と同意見ではあるみたいだ。しかし皆まではしゃべってくれず、人差し指を唇に添える。


 内緒……まあ見ていろと言うことか。

 いつもそうだ。


 おかげで妾はリュネの表情ひとつでなんとなく何をするつもりなのかわかるようになってきた。

 と言っても今回はどういうことをするつもりなのかわからない。


 赤く光る目を見上げる――と一緒に視界に移った。

 闇夜の空に飛んでいる何か。闇と同化していて目を凝らさなければ見られなかったろう。



 ――あれは……

 リュネの餌になっていた翼竜か。


 グール化して眷属にでもしたのか。

 いつに間にそんな芸当ができるようになったのか。感心すると同時にリュネの学習能力に驚愕する。

 案外第二の人生を謳歌しているのはリュネ自身かもしれないな。きっかけは散々だったが……。


 それにしてもよくぞまあバレないものだな。

 警備兵とかいるだろうに。

 いやもしかしたら妾たちが知らないだけで、城壁とかで騒ぎにでもなっていることだろう。


 そいつが急降下してくる。

 比較的小型なためこの裏路地でもひっかかることはない。


 そして前を情けなく進む一人と背負ったもう一人を丸呑みした。



「よしよし」



 リュネが宥める翼竜。

 目は虚でどこを向いているのかわからない。


 危険はないだろうから妾も恐る恐る歩み寄る。


 近づくたびに身体の仔細がわかってしまい、五歩くらい先で止まった。

 そのさきは二人の人間の血潮。

 

 翼竜はリュネが食らった牙の跡も、投擲による傷もそのまま。なんなら骨と肉が溢れ出している。リュネも良く愛でられるなと感心してしまう。少々ドン引きだ。

 

 どうやら主に対しては従順で、嬉しそうにリュネの撫でる手のひらを受け止めている。餌食にされた側なはずだが……。力関係には屈服せざるを得ないのだろう。


 それはそれで羨ましい。

 リュネも人間よりも従順で純粋な彼らの方が親しみやすいのだろう。あの時の魚人たちに対してもそう悪い印象は抱いていないはず。妾と彼らの接し方、彼らの愛らしさを見ていた。警戒はしていたが嫌悪はなかったはずだ。

 また新たなリュネだなあとその光景をまったり眺めた。


 一通り労うと満足したのか再び上空へと飛んでいった。

 その後に妾をみたリュネ。直接手を下すまでもない、と言いたげな瞳だった。

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