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28話


 妾が風の魔法を使ってから、リュネが倒れて、前の二人も倒れた。ドミノ倒しみたく。すかさず魔術師の時のように武闘家にも陰で縛り上げた。



「リュ、リュネ」



 情けない声でリュネを呼ぶ武闘家。


 怯えているのだろうが、リュネは狂っていない。

「どうなってしまったんだ」と震える声で伝える。確かにこいつらはあの後を知らない。


 リュネもわざわざ教えるようなことはしないと決めたらしい。無様に地べたに座る武闘家を見下す。

 

 そもそも、だ。

 この程度で恐るとは……。

 リュネのお得意の演技だろう。単に普通の人間と相対した状態を楽しんだだけかもしれない。


 妾の血でさえ不味いと抜かしていた人間の血で興奮することはない。

 竜の血ならわからんが……。



「恨みはないが、金で買われたか」

「あ、ああ……すまん。今回もだ。情けないが、金がないからな」



 それは仕方ないとでも言いたげなリュネの顔。金銭面を知っていたからこそ、パーティに誘ったのだろう。

 魔術師は催眠で眠らせているので、幾つか武闘家に聞いてみることにした。リュネの言葉からパーティで比較的まともそうだったのは武闘家か魔術師だったし今回ここで闇討ちしてきてくれたのは行幸といえば行幸。

 

 武闘家によるとダンジョンに来た全てのパーティ自体不要な人材をうまく排斥するために選抜されていたという。

 リュネやそれ以外に来ていたパーティは排除用。と言っても他国のパーティは正々堂々と挑んで負けていったはずだ。

 

 うーーむ。


 確かにお互いが庇い合い、助け合うものたちと比較すると明らかにサポート職なのに前線に立たせたり肉壁にしたりという者たちもいたな。

 何度もあった。

 しかし魔物の命を取るか取られるかの鬩ぎ合いの場だ。そう言うものだと思いながら見ていたのもある。だからこそ記憶に留めておくことはなかった。


 リュネの時は特殊過ぎた。

 本当に演者だった。

 妾が上っ面だけしか観れてないこともあるが。


 もしかしたら第三者が見ていたのか、それとも中継でもしていたのかもしれない。



 とにかく武闘家は凱旋後。

 地図を作り、宝があると触れ回って地図を売って利益としていたらしい。と言うことは、後続の人間はただ宝欲しさに来ていたということか。

 


「今日、いや、さっきか。大臣から俺と魔術師に命が下ったんだ。二人組を倒せと。王からの伝言らしいが……。それで事が済んだら死体はそのままにしておく。で、俺らは証拠を残さずにやる。街の人間が発見した後、別件の事件として扱えばいいと……」

「……」

「しかし生きてたんだな。よかった……」



 リュネは首を傾け聞いていた。

 対する武闘家はリュネが一応生きてここに立っていることに安堵していた。

 

 魔法を使って倒したのでほんの少し謁見の溜飲が下がった。しかしこれを聞いていたらまたモヤモヤが沸き起こる。



 ーーお前らが先に見捨てたんだが。 


 

 そんな言を妾は飲み込む。

 妾の方を見て、武闘家が再び謝罪する。



「本当にすまん」



 リュネが妾を見る。

 それほど顔酷かっただろうか?

 自らのほっぺを両手で揉む。



「もういい。君は家族が多いし仕方ない」



 武闘家は救いがあったとポカンと口を開ける。嬉しそうな、驚きも混じった間抜けな顔をしていた。

 リュネ自体パーティメンバーに対して何も感じていなかった。むしろ己を恥じていたから今もそう言う気持ちなのだろう。

 いや、今は呆れもあるかもしれないな。


 リュネがため息をつく。



「解放してやれ」

「むう、わかった」

「ただし、報告は虚偽をしろよ」

 リュネが釘を刺す。

 


「あ、ああ……! 恩に着る」

「それと、俺の家、勝手に使っていいぞ」



 ……随分人が良過ぎないか。

 しばらく口を出さずに武闘家を魔法で縛っていた。 流石にと思い、リュネの横腹を肘で突く。

 

 リュネは何故かイタズラ好きな少年のように嬉しそうに笑っていた。何か企んでるな……ちょっと怖いぞ。





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