25話
特に会話もなく、モヤモヤしているといつの間にか城の外に出ていた。
完全に陽は落ちていて、街中は日中とはまた違った光に満たされる。
リュネの横顔が人口の光に照らされる。
カークリノラース王国は魔法技術に優れていると小耳に挟んでいる。
推測にしかすぎないが、謁見間と同じで蓄光で光を保存しておいて照らしているのだろう。
少しだけ魔力を感じる。そういう技術が使われているはずだ。
光に照らされて幾分か顔色もよさそうに見える。
それよりも。
これからどうするのか。宿に泊まるつもりだろうか。
彼の家に行くでもいい。
ウキウキでこの鬱蒼とした気分も晴れることだろう。
屈辱を受けたせいか否か、押し黙ったまま。
妾が堪えきれずに問うた。
「で……これからどうするのだ」
「そうだな……」
返事は心なしか上の空。
致し方ないか。
反応をくれただけ良しというものだ。
リュネの表情から大体の感情を拾うことが妾の特技になってきた。今は屈辱というよりもなんだかワクワクしているようにも見えてしまう。
まだ時間も経っていないのに切り替えることなんでできるのか。
特に悔しさなんて引きずりそうな者だが。
魔王を倒した後だって、不燃焼の如く翼竜たちを撃ち落としていたし……。
わからない。
話してくれると良いのだが、生返事になりそうなので期待は薄い。
妾が街並みではなく顔ばかり見つめていたせいか、気がつくと裏路地に入っていたらしい。輝く街灯はなく、真っ暗だ。無駄な人工物がないため半月より膨らんだ月が頼りだ。
「来たか」
リュネが呟く。
その口調は待っていたかのようだ。
妾に語りかけたわけではない。目線を追う。
3回建ての建物の屋上に二つの影。
あれは……。
夜目が効くのだろうが、妾はそこまでない。夜の方が好きではあるだけだ。
相手は口を開かない。
リュネがマントを外す。
ついでに腰の鎧も外している。
外した瞬間ガキンと金属音が鳴る。
腰の鎧が落ちた音かと思ったが、違う。
リュネが直前で剣を構え、相手の攻撃を防いだ音だった。
相手は拳だった。
防がれたのがわかると近接してきた敵はとん、と軽いステップで一度後退。
今度は炎の球がこちらに向かって来ていた。
ここは妾が、と彼を片手で制して水の魔法を使用する。
蒸発して相殺された。
相手の炎の球の光源でわかったことがある。
二人はパーティにいた武闘家と魔術師。……名前は確か。
不用心にも顔が見える状態だ。
完全に舐めてかかっている。
「闇討ちか」
やはりといった呟き。
予想していたのだろう。
それほどあの王に関して熟知しているということ。なんだか妬けてしまう。
先ほどのモヤモヤもこの嫉妬と一緒にここで一度晴らしておこう。
「なるほど。妾があの魔術師を除けよう」
――「ああ」とでも言うように頷き返した。
剣を地に突き立てながらリュネが一言同意。




