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第31話 偽りの戦火 2 自由の空(ブルースカイ)

前話からの続きです。大国ブーレイに侵攻されたミーシアとブーレイにおけるパルチザンの反攻の話ですね。独裁国家(政権)に果敢に挑む人々にスフィーティアがどのように関わって行くのか?

そこには、剣聖は人の争いに介入してはならないという縛りへの苦悩も垣間見えます。 

 剣聖スフィーティア・エリス・クライにより、ミーシアに出現したドラゴンは、あらかた討伐された。


 ミーシアでのドラゴン排除の任務は一旦果たせたと考えたスフィーティアは、ドラゴンが出現してくるブーレイ側の調査に動くことになる。


 しかし、大打撃を受けたとはいえ、尚もブーレイ軍のミーシア侵攻は、収まらなかった。

 個々の戦線で見ると、大量の兵を動員(それは、例え非合法的で理不尽なものであっても)することが可能なブーレイに対し、ミーシアは押されており、依然予断を許さない状況は続いていた。




 剣聖スフィーティア・エリス・クライは、ブーレイに入った。

 協力者サポーターのアトス・ラ・フェールが、ドラゴンの情報を送って寄こしていたのだ。


 アトスからの手紙にはこうあった。


『ブーレイの反政府組織が有力な情報を持っているようだ。至急ブーレイ第3の都市

ジュースに来られたし』




 スフィーティアは、これを受けてブーレイ第3の都市であるジュースに入った。


 ジュースは、丁度ヴェストリ大陸とその南西のスズリ大陸との付け根に位置する港湾都市でヴァレンシア海に面する。歴史のある古いベージュ色の石造りの建物が所狭しと並び街並みが美しい都市だ。

 ただ、この地での宗教的な対立の歴史から、建物の建築様式が混在しており、この都市の興亡の歴史を感じさせる。スフィーティアは、ここでブーレイにおけるパルチザン組織『自由の空(ブルースカイ)』と接触する。



 『自由の空(ブルースカイ)』は、ブーレイにおける新興の反政府組織だ。ブーレイでは、反政府的行動は、常に監視されており、デモや抗議行動が起きてもすぐに治安機関により、取り締まられ鎮圧されてしまう。また、強引な手法(こじつけ、でっち上げなど)により、首謀者などは、捕縛されたり、謎の死(転落や溺死など)を遂げたりした。そのため、反政府組織は、こうした荒療治により弾圧され、壊滅させられてしまうから、組織的な反抗は難しくなっていた。ブルースカイも指導者や幹部が、何度も逮捕されたり暗殺されたりしていたが、表面化しない多層的なネットワーク(地下組織)を構築し、次第に組織力を強化していった。



 ここジュースには、ベージュ色のドーム型の教会など現在とは異なる建物が多くある旧市街の平凡な建物の中に『自由の空(ブルースカイ)』の拠点の一つがあった。



 スフィーティアは、剣聖の目立つ白のロングコート姿ではなく、変装していた。髪の色を輝く金色の髪を黒くし、眼の色も青碧眼から薄茶色に、髪も束ねてアップにしていた。この地域の女性の特徴に合わせたのだ。服装は、濃い緑色のゆったりとしたフリルのついた袖の短めのシャツにやはり濃い緑色の短めのスカートにひざ下までの網の目のヒールを履いた。その上にくすんだ白いフード付きのローブを纏い、顔を隠す。この地域では、女性は、髪を見せることも禁じられており、女性の権利が著しく制限されているのだ。



 スフィーティアは、旧市街を黄土色の水が流れる川の橋の上をゆっくりと歩いていた。

 そこに後ろから接近する男の人陰があった。


「ヴァランタイン王の趣味は?」

 後ろから接近してきた無精ひげの茶色髪で長髪の男がすれ違い様に声をかける。

「赤い()()()()()()()づくり」

 スフィーティアが、気のなさそうに返事する。

「このセンスのないダジャレ風の合言葉必要か?」

 男が、スフィーティアと横並びで歩きながら溜息交じりに言う。

「私に聞くな」

 スフィーティアが冷たい視線を男に向けた。


 男は、アトス・ラ・フェールだ。()聖魔道教団の聖魔騎士。今は、剣聖団の依頼で情報収集などを行う協力者サポーターだ。


 アトスは、前に回るとスフィーティアのフードの中を覗いた。

「へー、今日は茶色眼で黒髪か、上手く化けたな」

 アトスは、ニッと笑った。

「いつもの恰好だと目立つからな」

「へへへ、そっちも似合ってるぜ」

 アトスが、ウインクする。


 スフィーティアの顔がサッと赤くなった。

 急にバツが悪いと思ったのか、突然アトスの足を引っかけて転ばせた。

「うわッ!痛て!褒めたんじゃねえかよ!」

「知らん。お前のそういう所が気に入らん」

 スフィーティアは、そっぽを向き、さっさと歩いて行く。

「理不尽だ!」

 



 そんなやり取りの後、スフィーティアはアトスに案内され、茶色い石壁のオフィスの看板を掲げた建物に入った。一階の事務室を抜け、奥の部屋まで入り、家具の細工をいじると家具が横に動き地下への階段が現れた。


 二人は、地下へと続く暗い階段をアトスの指先の光魔法を頼りに降りていく。かなり階段を降った後広い空間に出た。そこは、天井から淡い光が灯っており、昔の遺跡の建物が幾つか並んでいた。

 とてもひんやりとする場所だ。


「地下にこんな場所があるとは・・」

 スフィーティアは辺りを見回す。

「お待ちしておりました。こちらにどうぞ」

 帯剣した簡素な革製の鎧をきた警護兵がやって来た。


 太い円柱の柱などが何本も見え、ここを支えているようだ。建物は、あまり大きくなく、皆四角いベージュ色の石が積み上げられた質素な造りだ。

「何千年も前の遺跡らしいぜ。まあ、俺にはわからんが」

「ここが、反政府組織の拠点・・・」



 3人は、その空間の一番奥の建物に入った。

 建物の中も、灯が少なくあまり明るくない。警護兵に案内され、2人はその一室に入った。



「ようこそ、『自由の空(ブルースカイ)』へ。私はここの指揮者シェフのエフレム・ベレツだ」

 やせ型であまり身長が高くなく(170Cm位)、濃い金髪で長髪の男だ。年齢は40歳頃だろうか。無精髭を生やし、イケメンの柔和の印象を消し、イケオジ感を出している。それが返って好印象を与えていた。

 スフィーティアが、フードを取り、顔を露わにして手を差し出す。

「剣聖スフィーティア・エリス・クライです。あなた方にはブーレイにおけるドラゴン利用の調査に協力してもらいたい」

「ああ、剣聖スフィーティア。我々はあなた方への協力を惜しまないつもりだ」

 二人は握手を交わした。



「早速状況を説明しよう。ブーレイ政府は、何らかの方法でドラゴンを呼び寄せ操作している。ミーシアとの戦線や国内の我々のような反政府組織の拠点を襲わせている。我々ブルースカイの武器などを保管している拠点も被害を受けた。こことここだ。」

 エフレムがテーブルにブーレイの地図を広げて説明した。いずれも郊外にある比較的大きな拠点のようだ。

「ブーレイがドラゴンを呼び寄せたり、操っているという証拠はあるんですか?私は、ブーレイにそんなことができるのかと疑問に思っています」

 スフィーティアは当然の疑問を投げかけた。


「その疑問は当然だ。我々もそんなことは信じたくないのだが、詳しくは首都ベーリンに来てくれないだろうか?ドラゴンを操っていると思われる証拠もベーリンの拠点にある。そして、ここ以上に政府の取り締まりが厳しく危険だが、あなたには、是非このブーレイという国の現実を見てもらいたいんだ」

「ブーレイの現実?」

「何故この国が変われないのか、非人道的なことが日常的に起きているのか、如何に市民は監視されているのか。いつここも発見され政府の治安組織の襲撃を受けるかわからない。この国では、危険は常にそこら中にあるということだ」

「・・・・」


 スフィーティアは、ドラゴンに関係ない事柄は無視すべきだとは考えていた。


 人や国家同士の争いに、剣聖は関与してはならないからだ。


 しかし、スフィーティアはそうはわかっていても、この国やミーシアで起きている理不尽な現実に目を瞑っていて良いのか迷っていた。


「わかりました。首都ベーリンに向かいましょう」

「おお、そうか。では、ベーリンの拠点で落ち合おう」



 スフィーティア・エリス・クライは、自由の空(ブルースカイ)指導者のエフレムの誘いに応じた。


 それは、ドラゴンの情報を入手するためもあるが、ブーレイとミーシアの戦争を何とかしたいという想いからだったのかもしれない。


                               (つづく)


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