僕の人生、想い
ー僕の人生は、なんだったのだろうか。
とても悲しく思いながら、僕は自分の過去を振り返っている。
10歳の僕は、母に愛されたくて愛されたくて仕方がなくて何度も母を追いかけている。そんな想いとは裏腹に母の愛は別のところに行ってしまう。母の目線の先にはいつもアイツ。優しくていい人。初めてアイツと会った時は、誰かわからなくて近所に住んでいるおじさん。そういう印象だった。僕がこれを買って、これ欲しい、ここ行きたくない、もう帰りたいと我儘を言った僕に対して、母の表情は怒っており、アイツがいない時に『ちゃんとして!』と怒る。僕はアイツと関わるのは嫌なのに強要してくる。僕はアイツのことをどうしても好きにはなれない。母を僕から奪ったのはアイツだから。それに、アイツに酷い態度をとると母は怒るから。僕を見て欲しいのに。母にとって愛しているのは僕じゃなくてアイツ。母は僕と二人でいる時はいつも無口で無表情なのに、アイツといる時はとても嬉しそうに笑う。
ーあぁ、僕はもう必要ないのかな、、、
日々成長していく中で僕の感情はグルグルと渦巻くようになり、心の中が荒れている。だがそんな感情を表に出さないように周りの人に心配をかけないように想いに蓋をして生きる屍のように日々を過ごす。
ー母に嫌われたくない、捨てられたくない。
その感情だけを守ろうとした。
だから僕は我慢した。嫌われたくなくて。いつか僕の方に戻って来てくれる。僕だけを見てくれる。だが、そんな願いは打ち砕かれて母はやはりアイツの元へ行く。やっぱり僕は必要ない。
そんな中、僕が感情を表にあまり出さずに、その悲しさを消そうと友達と遊びに行く。そして出会う。僕の心の支えであり、とても大切で大好きな人。いつも僕と遊んでくれて色々な楽しいことを一緒にしてくれる。大好きな人には友達が沢山いて、僕が大好きな人と関わるようになってから僕の友達も大好きな人と関わるようになる。
ー嫌だ。誰にも取られたくない。近づかないで。お願い。
そんなふうに思っていても願いは叶わず、友達は僕の大好きな人と横並びに座る。それで僕は嫉妬した。嫉妬してしまった。それでとんでもない行動をする。嫉妬に駆られて、友達のバッグを水溜りに落とす。それを謝らず、さぞ友達が悪いと思っている。それから僕は自分からその大好きな人と関わるのはやめた。友達を傷つけてしまった。その罪悪感が溜まっていく。最低なことをしてしまった。その出来事があってから僕は、僕のことが嫌い。こんなやつ、誰からも愛されない。愛される資格はない。大好きな人とも関わらず、友達とも距離を置き、誰とも関わらず、静かに生きるようになる。家に引き篭もりどこにも遊びに行かない。もう嫌だ。外にいても居場所がない。家にいても居場所がない。僕はどこに行けばいいのだろうか。
そんな思いを抱えたまま、僕は14歳になった。
だが、それでも母は戻ってこない。母はこれから家を出る。事前に僕は家はここだよと紹介されたが、僕はこの家を出る気はない。ここにずっと住む。僕の思い出の家。僕はこの家を出ない。そう伝えると母は悲しそうにして、母だけ家を出て引っ越して行った。僕は本当に捨てられてしまった。こんな最低な僕はやっぱり必要ない。
負の感情を沢山溜めてしまった僕は母のことが嫌いになっていた。もう僕は諦めた。母からの愛を取り戻すことを。
そして20歳になった僕は、とても素敵で可憐で心優しく僕のことを愛してくれる存在に出会った。それからの僕は一段と変わった。したいことはしたいといい、行動に移すし実行するように変化した。彼女の為に色々したいし、迷惑かけないように努力したいと感じた。
しかし同時に、すごく不満を持つようになる。アイツが僕のためにしてくれると言った成人式のお祝いは、僕にとってはとてもありがたいことだとは思うのだが、内心とても嫌だ。他にしたいことが僕にはあったのにそれを中断してお祝いの席に参加する。僕のしたいことができない。お祝いをしてくれなんて頼んでない。でもそれは決定だから母は早く帰って来なさいと僕を縛る。縛られていて嫌だと感じる日々。僕は20歳。もう立派な大人だ。だからもう僕を解放してほしい。僕は逃げる。彼女の元へ。
これからは、可愛い彼女と共に生きていこう、これからの人生を。
ー彼女を絶対に幸せにする
だが、このとても晴れやかで清々しい想いは叶うことなく、目の前を明るく照らしたライトとブレーキの音と共に僕の人生の幕は閉じてしまったのである。