試練 幼年期の終わり 続
「…駄目。とっくに事切れてる」
イナンナさんは淡々と死体を検分し、事実だけを伝えてくれた。見ればわかることだったが、改めて言葉にすることに意味がある。死体の発見に動揺したのはおれだけで、イナンナさんやミァハさんは即座に対応している。どころか、姉二人やアスラでさえも周囲の警戒や死体の検分を手伝っている。
立ちすくんでいるのはおれだけだ。
「こっちもです。…一撃でやられてる?」
「そうね。これ、たぶんだけど魔獣にやられてない。大きな刃物で両断された? あるいは、風の魔法でやられたのかしら?」
姉二人の冷静な言葉をただただ聞くしかない。
目の前で同胞がなくなったのをどう受け止めればいいのかわからなかったのだ。そう、目の前に転がっている亡骸達がよく知っているやつらだったからだ。
長老の元で一緒に学んでいた仲間。
おそらくは、今のおれと同年代。年齢も二桁に届いていないような連中だったのだ。
「なんで、こいつらがここに…?」
「村が襲われたんでしょうね。出血量が少ないから村で襲撃されて、傷を負って、森に忍び込んでしばらくした後に魔獣が襲ってきた。それを迎撃して、事切れたってことでしょうね。…立派に戦ったのね」
ミァハさんは慈しむように亡骸を扱っている。
けれど、話している内容は明らかに緊急を要する内容だった。というか、すぐにでも動き出さなければならない状況なんじゃないだろうか。
理性ではわかっていても目の前の光景と現実離れした状況に頭がパンクしそうだった。
いや、わかってる。冷静さを欠いたら負けだ。
少しでも自分に出来ることを判断しないと。
「煙が上がってる。方角からして村の方だ」
アスラが普段とはまるで違う冷徹な声音で言った。
よかった、あいつはあいつで動揺しているらしい。そんなことを思ったが、やっぱりそれ以上の緊急事態が続いていて頭がどうにかなりそうだった。
つまり、あれだ。
未だに襲撃は続いていて、戦闘は継続中ってことだろうか。
この惨劇すらもまだまだ序の口ってことだろう。
「まずは情報収集すべきだ」
知らず口から出たのは凡庸にしか思えない行動だった。けれど、一番大事なことでもある。
おれたちには三日間の空白がある。
その間に何が起きたのかわからないが、少なくとも現状の把握が必要である。幸い、この場にいる面子にはそれぞれ特徴的で有効な魔法を使える連中が揃っている。それをうまく活用すれば、いや、しなければ生き残れない。
そう想定して行動することにした。
でなければ、動けなくなる気がしたのだ。
修羅場。
覚悟を決めなければ、絶対に生き残れないと自分自身に言い聞かせた。
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