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試練 幼年期の終わり


 結局、宴は三日三晩の間終わらなかった。


 フレイヤさんは生粋のエンターテイナーというかイベンターというか。さすがは迷宮の管理人と名乗るだけはあった。宴の最中でも飽きがくることはなく、気づけば試練の期日になっていたような感覚である。

 迷宮にきた当初の絶望感はどこへやら。本当にこれでよかったのかと思えるほどあっさりと試練を乗り越えてしまったのであった。

 いや、本当にこれでよかったんだろうか。


「楽しい時間はあっという間ね! また会えることを楽しみにしてるわ!」


 フレイヤさんは満面の笑みを浮かべている。

 輝くような笑顔にこっちも笑顔になってしまう。嫌味のないまっすぐな笑みというのはそれだけで場の雰囲気を明るくするのだ。別れの雰囲気なんて一瞬で吹き飛んでしまった。


「こちらこそ。また近いうちにお話させてくださいね」


「…それでは」


 別れの言葉もあっさりとしたものだ。

 ミァハさんもイナンナさんもこの宴を十分に楽しんだんだろう。それでも惜しむことがないのは満足感で一杯だったからじゃなかろうか。少なくともおれ自身はそうだった。


「それじゃ、落ち着いたらすぐ来ますから」 

 

「駄目だ。しばらくは村で過ごすぞ」


「いや、なんでお前が決めんだよ」

 

 おれの言葉をなぜかアスラは即座に却下しやがった。

 宴の最中もそうだった。あれだけの大騒ぎの中でも必ずおれの隣にいたし、逐一行動にも口を出されたし、なぜか同意を求められたこともあった。

 今の今まで気にはならなかったが、どうにもおれを拘束しようとしている節がある。なんのつもりか知らないが、ここらではっきりしておく必要がある。


「当たり前だろ。どうせお前、試練が終わったらここに入り浸るつもりだろ。そんなのダメだ。その前にやることがいっぱいあるんだからな」


「やること? なんだよ、それ」


「そりゃ、お前、まずはお互いの家に挨拶とか、その、新居とか…」


「はぁ? 今更挨拶なんてしてどうすんだよ」


「ばっ、お前、そういうとこをちゃんとしないとだな…!」


 顔を真っ赤にして反論されても意味がわからない。こいつが言っていることの意味がまるでわからず、ひたすら困惑するしかなかった。まぁ、戦士とし認められるんだからお祝いだってしなければならないし、これから相棒として過ごすのだから改めてそういう挨拶が必要なのかもしれない。 

 けれど、そんな急ぐ必要もないような気がするんだが。


「愚弟。まずは実家に帰るぞ」


「そうね。随分家を空けてたんだから、まずは親孝行からしなきゃね。ええ、しばらくは家族団欒で過ごすのが筋ってもんでしょ」

 

 姉二人まで参戦してきやがった。

 いや、まぁ、確かに家に戻る必要はあるだろう。けれども、だ。なんだかイーナ姉の言い方が妙に気になった。しばらくってのがどのくらいの期間なのかわからないが、姉二人までおれの行動を制限しようとしてるんじゃなかろうか。

 そのことが妙に気になったがこれ以上触れるのは得策じゃないと流すことにした。なに、隙を見て来ればいいだけだ。

 戦士になればこの迷宮に入る許可をもらう必要もない。見張りの連中だって、おれを止めることはできないんだから。

 それだけ、戦士には特権があるのである。


「とにかく、ありがとうございました。落ち着いたらまた来ますので」


「ええ。あ、あとあの金貨の件だけれど…えーと、ここに来ても持っていくことは出来ないから、ね? この間の話し合いの通り約束しちゃったから、ね?」

 

「…そ、そうですか」


 気まずそうなフレイヤさんになんとか笑みを返した。

 いや、わかっていたんだ。わかってはいたが、こういう用意周到な真似をされると頭にくる。相当引き攣った笑みを浮かべていただろうがフレイヤさんの気まずそうな表情も相当だったので文句は言えなかった。

 まぁ、そこはもう割り切ればいいのだ。

 ストッパーとして期待した役割を先回りしてやってくれたのだから感謝しかない。しかないんだが、どうにも暴走しそうな気配が増し増しなんだよなぁ…。

 そういう嫌な予感はまた棚に上げることにした。考えても仕方がないことは考えないのが一番大事なのだ。


「でも、来てくれたら大歓迎! また宴を開くから絶対に来てね! あなたたちは私にとってはじめての迷宮攻略者なんだから、精一杯えこひいきするからっ!」


 いや、言い方。

 そうは思ったが歓迎されて悪い気は当然しないので、そのまま別れとなった。

 魔法の発動は至極あっさりしたものだった。

 膨大な魔力が瞬間的に弾けたと思ったと同時に、森が見えた。

 見慣れない光景だが、知っている森だ。

 ここは迷宮の入り口である。

 魔法が成功したことを何の感慨もなく受け入れて、村に帰ろうとして、


「なんだよ、これ」


 そこに無数の死体があることに気づいた。

 魔獣。

 そして、村の住人たちだ。


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