試練 正気に戻れ 終点
「は?」
思わずアスラを凝視する。
なぜか得意げな表情を浮かべるアスラを見つめながら言葉の意味を脳内で反芻した。
小遣い。
いやいやいやいや、おかしくないかそれ。
なんで、おれの金をアスラのやつに管理されなきゃ何ねえんだよ!
「ちょっと待てよ、なんでそんなことになってんだ!」
「ちなみにアスラがいなければ私達が管理するから。あんたに任せたらすぐにすっからかんになるのが目に見えてんのよ」
「愚弟。お前に財布の管理は出来ない。姉として断言する」
「はぁああっ?」
更なる衝撃的な事実。
せっかくの無双チートがまさかの身内に邪魔される事態になるとは。いや、確かに前世で読んだ異世界転生ものにも悪辣な兄弟はいたがチートスキルを邪魔するなんてピンポイント的な存在がいていいわけがねえだろうが!
あまりの理不尽さに言葉を失ったが、この状況ををひっくり返す方法を思いつく。
そう、フレイヤさんだ。
なんとか彼女を説得し、こいつらの理不尽を覆してざまぁしなければ…っ!
「フレイヤさん! あいつらが言ってることは気にしないでください! あくまでおれの呼びかけに答えてくれれば」
「ごめんなさい。あの娘達の願いだから私には否定することはできないわ」
このクソ女ども…!
湧き上がる怒気をなんとか抑える。こんなところでブチギレてもなんの意味もないのだ。とにかく誠意を持って説得するしかない。ここで引けばその瞬間にこれからの人生ハードモード間違いなしなんだから。
前世ですらまともに生きていたとは言い難いやつが異世界でチートなしで真っ当に生きれるわけねえだろうが…!
「いや、ほんと、あいつらが言ってることは適当なんで、ほら、おれってそういうじゃないっていうか、別に無駄遣いとかしませんから…!」
必死の懇願に我ながらやりすぎだと思う。
というか、そもそもの話だ。
なんだか、まるで自分じゃないみたいに必死すぎるというか、なんというか。我ながらこんなにこだわるっけと思うこともないような…?
妙な違和感に気づくと同時に、自分自身のおかしさにも気づくようになってきたというか。
「うん、もうダメね。飲み込まれてる」
「え?」
「ごめんなさい、少し乱暴にするから」
フレイヤさんの言葉に疑問符が浮かぶと同時に、全身が動かなくなった。いや、ほんと、指一本動かない。魔力の流れが見えたので魔法で間違いないが、発動の間すらなかったせいで何をされているのかもわからなかった。
「えっと。これは一体…?」
「ごめんね」
困惑するおれに構わず、フレイヤさんは大量につまれた金貨の方へ手を向けた。
魔力を帯びた金貨。
希少価値すらあるあれはおれにとって必要不可欠なものだ。特に【融資】のスキルには唯一無二のアイテムと言っていい。
それが、目の前から消えた。
文字通り、跡形もなく消えてしまったのだ。
「おい、ふざけんなぁあああああああっ!」
絶叫。
自分のものとは思えない大音声に一瞬で我に帰った。
なんだ、今の。
あれはただフレイヤさんが金貨をどこかに移動しただけのはずだ。そんなのは見た瞬間にわかっていたはずだ。
なのに、なぜか叫ばずにはいられなくなったのだ。まるで自分にとって最も大切なものを失ったかのような喪失感に襲われたというかなんというか。
もちろん、そんな感情はすぐに消えさったが。
「あの金貨には魔力があって希少な物質でできている。けれどそれだけじゃない」
「あの金貨は自分の価値がわかる存在を狂わせるの。だから、あなただけが管理しちゃダメ。私を含め、みんなで管理しなきゃね」
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