試練 唯一にして最高の報酬 続
財宝。
その言葉を聞いてここまで色々と頭の中でこねていた理屈が一気になくなった。理由は単純だ。おれのスキルにおいて最も必要性が高いものだったからである。
スキル【融資】。
その名の通り対象に貸し付けることを肝とするこのスキルは、その原資が必要となる。そもそも、アスラに使っているあれは貸しという酷く曖昧なものだ。その曖昧なものであれだけの効果がある。それだけ強力なスキルということの証左でしかなかった。
けれど、財宝があれば、つまり、元手があれば本来のスキルの使い方ができるはずだ。
つまり、信用創造が可能となるのである。
「自慢じゃないんだけれど、宝物庫には古今東西の財宝が収められてるの。昔の貴重な魔導書だったり、古代遺物だったり、中には国宝なんて呼ばれる類のものもあるから」
「金」
「え?」
「金が欲しい、です」
思わず敬語になってしまった。
周囲の視線が刺さるのを感じたが、今はそんなことに構っている時間はない。ここでの交渉で、これからの人生の難易度が段違いになるのだ。
信用創造ができれば、うまくやれば世界だって手中に収めることができる。
現に、前世の世界ではおれたちはそうやって支配されたのだから。資本主義の豚。その飼い主になることだって可能なのである。
「キン? えっと、それって何かの遺物かしら?」
「鉱物です」
「鉱物…? 宝石の類ってことかしら? そんなのあったかしら?」
不思議そうに首を傾げる姿を見て、失敗したのではないかと思った。あれだ、前世にあった価値のあるものをつい上げてしまったが世間知らずが出てしまった。
別に金でなくてもいいのだ。
あくまで信用力のあるものが欲しい。それが通貨として利用されているならなお素晴らしい。
「あの、今更なんですけどこの世界に通貨ってあるんですか?」
「え、通貨? ああ、お金のことね。はい、これよっ!」
ぽん、とこれまたファンシーな効果音。
山のように積まれた金貨に目が眩みそうになった。あるじゃん、金貨。そう思ったと同時に、異質さにも気づいた。
魔力を帯びている?
「あら? もしかして、みんなはじめて見るの?」
どうやら面食らっていたのはおれだけじゃないらしい。アスラや姉二人はもちろん、イナンナさんもきょとんとした表情を浮かべていた。
「ごめんなさい、まだみんな村を出たことがないもので。でも、こんな大量なお金は初めて見たわ」
ミァハさんがとりなすように言った。
けれど全員が戸惑っているのは貨幣を見たことがないからだけではないはずだ。込められた魔力が尋常じゃない。けれど、なぜか全く脅威すら感じないのだ。
というか、魔力は込められているのはわかるのに魔力が滲んでないと言えばいいのだろうか。
まるで魔力が純粋な塊になったかのような印象を覚えた。
これだ、と思った。
これこそがおれのスキルに最も必要なものだと確信した。
「この金貨の原材料をくれ! それだけでおれは十分だ!」
「それは駄目」
「へ?」
「だってこの金貨だけしかないの。もしかすると世界中探してもこれだけしか残っていないかもしれないから」
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