試練 後の祭り編 終点
「さぁ、歓迎の宴よ! みんな、出ておいで!」
宣言一つ、歓喜の音が鳴る。
金属が擦れたり、ぶつかった時の音だ。
食器や調度品、料理までもがどこからともなく文字通り飛んできた。昔見た某ブランドのアニメみたいだ。幻想的な光景に見惚れそうになる自分自身を戒めた。アニメで似たような光景を見たおかげでおれ自身には耐性はあるが、周囲にいる皆んなには耐えられる光景ではなかったのだろう。
全員が見惚れてしまい、ただただ息を呑んでいる。
「…きれい」
魔力が弾け、流れる輝き。
様々な色合いで揺れるのが目についた。…いや、本当に幻想的だ。しかも作り物めいたものじゃなくて、実に合理的な流れなもんだから、目を奪われてしまう。目の前を光景を生み出すには理想的な流れ。弾ける瞬間の光一つとってすら意味のある行為そのもので、膨大な魔力による力技で幻想的な光景を生み出しているわけじゃないことがわかる。
おれがアスラにスキルを使って膨大な魔力を付与した時に匹敵する魔力量。それを意のままに操っている光景に心躍らないと言えば嘘になる。だからこそ危険なのは十分に理解している。
けれど、ダメだ。ここまでたたみ込まれるように見せつけられたら、あとは従う他なかった。
ある種の敬意にも似た感情。
きっと、この場にいる全員が彼女を信用、いや、崇拝したくなってしまう。
なにより、指揮者のように振る舞う彼女の姿。美しさに愛嬌と凛々しさ。そんな複雑な魅力が絡み合っているのだから。
「さぁ、準備万端! どうぞ召し上がれ!」
色とりどりの料理が白いシンクの敷かれたテーブルへ置かれている。見た目だけは食欲をそそるものだったが、中身はどうなんだろうか。なんの肉かも野菜かもわからない。すぐにでも手を伸ばしそうになる自分を我慢させるので精一杯だった。
香りも素晴らしい。
一口食べれば極楽が待っているだろう。
「ちょっと待ってくれ」
辛うじて言葉を発することができた。
今にも料理に手を伸ばそうとした姉二人を含め、全員の視線が突き刺さる。特に姉二人の視線がきつい気がする。
なぜか味方の方が雰囲気が悪くなったが、待ったをかけられた当の本人は、
「え、何かしら? 聞きたいことがあるのよね、なんでも聞いて? この迷宮のこと? それとも、私のことかしら?」
なぜか満面の笑みで歓迎してくれている。
本当にどうなってんだ、この状況は。
おれまで自分が悪いことをしている気分になっているのが一番の問題だった。
「なにが目的なんだ?」
「? 目的って、えっと、なんの話かしら?」
心底不思議そうな表情を浮かべているのが小憎らしい。
こんな歓迎をするってのは何か下心があるからとしか思えないのだ、普通は。
だから、おれは追求することにした。
「だから、なんでこんな歓迎をするのかわからないって言ってるんだ。おれは迷宮をぶっ壊そうとしてたんだぞ」
「ああ、なんだそういう意味ね」
「だって、久しぶりに地上の人と出会ったんですもの。仲良くなりたいじゃない?」
そんなふざけた回答に、おれは言葉を失った。
ああ。
これは負けたな、と心の底から脱帽した。
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