試練 後の祭り編
「ようこそ、私の城へっ!」
まるで魔王の城だ。
おどろおどろしい雰囲気はもちろん、堅牢そうな西洋風の城の作り、なぜか黒い雲と雷鳴が轟く風景は何度見ても魔王の城にしか見えない。
これまたはちゃめちゃな出来事に思考が鈍くなっているのを感じる。というか、細かいことを考えてもしょうがないのだ。
あの膨大な魔力を使いこなし、空間転移なんて馬鹿げた真似をやってのけたのだ。どう考えてもおれたちの手に負える次元にない。あの膨大な魔力をおれたちに向けて炸裂させるたけで全滅だ。痛みを感じることなく、跡形もなくなっちまうだろう。
つまり、フレイヤはおれたちなんかよりもよほどの化け物なわけで。
そんな化け物がなぜかおれたちを歓迎したいという状況なのだ。しかも、その化け物が管理する迷宮や魔獣を散々めちゃくちゃにしたのに。
…まぁ、従うしかないだろうな。
この場にいる全員が現状を正確に理解しているんだろう。騒がしい雰囲気もなくなり、ひりつく雰囲気が場を支配した。
「あ、あら? ごめんなさい、確かにちょっと怖いわよね? 外観は絶賛構想中というか、パパとママが悪趣味なせいで私も苦労してるっていうか…と、とにかく、中はきちんとしてるから! さっそく行きましょうっ!」
また、魔力が弾けた。
どうやらノーモーションで膨大な魔力をコントロールできるらしい。ますます勝ち目がなくなって、戦う時点で負けだ。とにかく、彼女の気分を損ねた瞬間に死ぬことだけは確定した。
「どう? ここが私の城よっ!」
豪華絢爛。
正直、おれにはそんな言葉しか思い浮かばなかった。
外から見た城はおどろおどろしいものでしかなかったが、こうして中を見ればどれだけ素晴らしいものなのかわかる。照明の明るさも、内装の上品さ、調度品の精巧さ、華やかな雰囲気。どっかの社長の邸宅に招かれた時のことを思い出す。社長が得意げに語り、支店長が話を合わせているのを傍で聞くだけしかなかった。
その時はその凄さはわからなかったが、この城にあるものは見ただけでその凄さがわかる。
床も大理石のような綺麗な何かが敷き詰められている。魔力をわずかに帯びており、おそらくは仄かに光も発しているようだった。
「すごいですね」
ぽつり、とミァハさんは言った。端的すぎてお世辞でも言っているのかと思ったが、表情が違う。心奪われるという言葉があるが、それに近いものじゃないだろうか。おれ以外の全員がそんな表情を浮かべて、城の内装を見ていた。
まずいな、と思った。
男のおれより感受性の高い女性の方が感じるものがあるのかもしれない。けれど、その場にいる全員がここまで深く感じ入った表情を浮かべるだろうか。
満面の笑みを浮かべるフレイヤに悪意はない。
けれど、膨大すぎる魔力や規格外の魔法を見ていればわかる。
彼女は、存在自体が魔的なのだ。
なすがままでいようと思ったが、修正しなければならない。このままじゃ全てを奪われるかもしれなかった。
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