試練 手仕舞い編 終
「だからね、あなた達に暴れられると迷宮の魔獣たちも困るの。幸い魔獣達はまだ生きてるし、粉々だけど…迷宮を壊されたら、流石に彼らも死んじゃうと思うの。だから、これ以上はお互いのためにならないって言うか、だからここで仲直り! …しない?」
必死の提案には真に迫る勢いがある。
フレイヤはあくまで和平交渉をしたいらしい。
まぁ、和平交渉云々の前におれたちが暴れる理由はもうないんだが。
「その点に関しては大丈夫です。魔獣が襲ってこなければ暴れる必要もありませんから」
あれだけ息も絶え絶えだったのに、ミァハさんの顔色は正常なものに戻っている。話す所作も普段のそれで致命傷に近い傷を負っていたのが嘘のようだ。その傷ですらすでになく、服が破れていることだけがさっきまでのことが現実であることを物語っている。
「…ミァハ」
「大丈夫よ。もうなんともないし、むしろ怪我する前よりも元気になった気がするわ」
イナンナさんの心配そうな視線にもイナンナさんは笑顔で返した。
しかし、本当に具合は良さそうだ。
誰かを治す魔法、というかあれはそういうレベルのものではなかった。瞬時に傷口が復元したのには衝撃を受けた。
あの魔力の弾け方。
あれは今まで見たどの魔法の発動とも違っていた。そこに何かがあるような気がする。
「本当っ? なら仲直りしましょう! 素敵な出会いに感謝をっ!」
「…近いから離れて」
抱きつかんばかりの勢いでミァハさんに迫るフレイヤをイナンナさんは押し返した。うん、実に良きかな。目の保養になるなぁ、と現実逃避気味に考えた。
いや、実際現実逃避どころかこの場から逃げ出したくなっていた。
あっちのにぎやかな雰囲気とは違い、こっちは雰囲気が最悪だった。
「愚弟、説明しろ」
耳元で告げられた言葉は氷のような冷たさを持っていた。鬼の形相をしたジーナ姉から顔を背けても、今度はイーナ姉の冷たい視線にぶち当たる。こちらはゴミを見るような視線でおれを殺そうとしている。いや、視線で殺すとか意味はわからないが、実際にこの視線を浴びせられればわかるはずだ。自害しろと命じられている気分になるのである。
「トール」
じぃっとアスラがおれを見ている。
睨んでいるわけでもなく、険しい表情をしているわけでもない。しかし、どこか咎めるような視線というか。何が言いたいのかわからないが聞くのも躊躇われた。いや、ぶっちゃけ、これ以上場の雰囲気をカオスにしたくもなかった。
「それじゃ、仲直りの記念に私の家に行きましょう! 大丈夫、すぐに行けるから! そこであなた達を歓迎させて!」
家?
なんでそんな話になる、というつっこみをするまもなかった。
フレイヤの宣言の後すぐに魔力が弾けたのだ。
それと同時に風景がまた一変した。
魔王の城。
そんな風にしか見えない建物が目の前にあった。
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