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試練 手仕舞い編 続

「ありがとう! やっぱり話し合いって大事ね!」


 今にも踊り出しそうな雰囲気でフレイヤは満面の笑みを浮かべている。周囲は瓦礫の山で魔獣の肉片が散乱しているのによくそんな風に出来るもんだと感心した。

 すでにスキルの発動は止めている。

 アスラも正気に戻り、フレイヤを胡散臭そうに睨みつけていた。

 そんな視線に晒されながらも彼女は笑みを崩さない。

 迷宮を破壊して魔獣を殺し尽くした加害者と破壊され身内を殺された被害者の構図としては明らかにおかしい状況だった。

 いや、彼女の言葉が正しいなら肉片になった魔獣も生きているのかもしれない。そんな程度の想いで死骸を見たら、目が合った。

 こわっ。

 本当に、こいつら生きている。

 

「…あなたはなんなの?」


「ええっと、さっき話した通りこの迷宮の管理者なの。ところで、あなたは? 私はフレイヤ!」


「…申し訳ないけれど、名乗るつもりはないわ」


「あら、そう。その、残念ね」

 

 イナンナさんは完全にフレイヤを敵視している。

 敵意を抱く理由に関してはミァハさんのことを考えれば当然のことだったし、明らかに全てが怪しすぎた。いくらミァハさんが治ったからって信用できるはずがない。

 

 ただ、まぁ。

 悪いやつではないんじゃないかってのはなんとなく思った。


「あだっ!」


「ぼーっとしてんな…っ!」


 アスラのやつがいきなり足を踏んできた。

 さっきまでフレイヤさんを睨みつけていたくせに今度はおれを視線で殺さんばかりの勢いで睨みつけてきていた。

 どうやら了承のないスキル発動にブチギレているらしい。その間に関しては後で謝罪するしかない。下手な言い訳をしても逆効果だ。


「管理者って言ったわよね?」


 ジーナ姉が横槍を入れた。

 フレイヤさんとイナンナさんの気まずい雰囲気を壊してくれたのはよかったが、やはりジーナ姉も敵意や疑念が強いらしい。向ける視線は絶対零度で迫力も普段の数段増しだ。フレイヤさんも若干ビビっているのが傍で見てもわかった。


「え、ええ、そうなの! パパとママが暫く留守にするからって、ここ数百年は私がやってて」


「生物災害もあんたが起こしたわけ?」


「え。…ち、違うのっ! あれは私がやったわけじゃなくて、迷宮の自浄機能っていうか、勝手に出てきちゃうっていうか。わたしも、迷宮内の掃除はしてたつもりなんだけど」


 なんの話をしてるんだ?

 姉から突然出てきたワードに違和感を覚える。

 生物災害とは、多分ダンジョンもので言うモンスターが溢れたりなんだりのことだろうか。前世で漫画やアニメで定番のイベントだが、この村にいる七年間でそんなことが起きたことはなかった。

 だから、この場でジーナ姉の口から出るワードとしてはおかしいと思った。


「そう。ま、昔のことだしどうでもいいんだけどさ」



「この迷宮内ならなんでも出来る管理者様がなんであたしたちの前に姿を現したわけ? 自慢の魔獣が全部やられちゃったからかしら?」


 ある種の疑問。

 そう、これまで管理者なんて存在は聞いたこともない。

 そんな存在が姿を見せることになる理由なんてのは、


「だって、あなたに迷宮を壊されるとどうしてか直らないから」


 おれとアスラのせいに決まっていた。

 直らない。

 なんだか嫌な予感がして、おれはこの場から逃げたくなった。

  


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