試練 大暴れ編
姉の暴力で一瞬意識が飛びそうになったが、それでもアスラは暴れ続けていた。どうやらある程度のことは命令すればやってくれるらしい。
つまり、おれが戦闘不能になってもある程度ならば、アスラはおれのスキルで大暴れできるってことだ。
新発見に喜びつつも、どうにかしてこの状況を生き残る策を考えなければならい。姉二人の殺意が身内へ向けるものから本気に変わっていくのを肌で感じながら、おれはどうしたもんかと頭を悩ませた。
いや、悩む必要もないか。
やることはもう決まってるんだから。
「そもそも、この試練自体おかしいんだよ!」
「愚弟。愚弟らしく脳みそが足りない話をするつもりはない。すぐにアスラを止めろ。愚弟だって戦士になるために試練を受けたはず」
「そうよ! あんたは戦士にならなくちゃいけないんでしょ!」
やっぱり長老に事情を聞いていたらしい。
説得の言葉はある意味芯を食っていたが。この場での説得の言葉としては正しくない。おれが適当なことを言ってミァハさんを救おうと思っているのだろう。それはある意味では正しいが、けれど、それだけじゃない。
この迷宮との因縁はアスラが脱走した時に遡るのだ。
「だってよぉ、そもそも三日もここに籠る意味って何だよ! こんな物騒な場所があって、迷宮から魔獣が飛び出して森まで魔獣の棲家になっちまってる! 戦士が森の番人までやってるなんて、馬鹿みたいな話じゃねえか!」
ずぅん、と震動が全身を襲った。
アスラは絶好調だ。
迷宮全てを揺らすような破壊行為を躊躇いもなく実行している。その効果も絶大すぎて、姉二人が動揺するのも当たり前のことだった。
いや、まぁ、見た目は変わっても一桁代の年齢なのだから当たり前なんだろうが。
「何言ってんのよあんた! 意味わかんない!」
「迷宮に三日籠るってのはあくまで迷宮で探索するの見越した訓練だろ! 生き残るって時点で頭がおかしいんだよ! どうせなら探索して迷宮を攻略しろって方がまだわかる! そうしないってことは誰もこの迷宮の底に行ったことがないってわけだ!」
「愚弟。それは」
「そもそもこんなもんがあること自体が間違ってんだ! 戦士になる? だったら死ぬほど鍛錬積めばいい、あとは実戦だってんなら他所で積めばいいじゃねえか! ここはみんなが安心に暮らすべき集落の近くだぞ! こんな物騒なとこをぶっ壊さねえ方がおかしいんだ! なんで残してるっ? つまり、なにもしようがねえってことだろ? 今、戦士になってる連中じゃな!」
我ながらめちゃくちゃな理論を叫びながら、とにかく魔力の解放に注力。いける。まだまだ暴れさせられることを確信した。
「だからぶっ壊す! 他の戦士ができなかった、世界最強の戦士とかいう親父にもできなかったことを俺たちでやってやるのさ!」
今度はゲンコツは飛んでこなかった。
姉達の顔は今まで見たことのない表情を浮かべている。得体の知れないものを見るような、頭がおかしくなった人間を見るような顔。
見覚えがある。
前世でのことだ。
それに気づいたと同時に、おれ自身が間違っていないことを確信した。
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