試練 決断編 終
「何考えてんのよ、この馬鹿!」
イーナ姉の罵倒を無視し、ひたすらアスラの魔力を解放し続ける。
七年の付き合い。
もちろん、その間にも魔力の解放を行ったことはあるがそれでもこの迷宮をぶち壊せる程度には残っていることを確信した。
まずは天井をぶち抜く。その後に階下へ手をつけることにした。
「愚弟! やめろ!」
ジーナ姉から組み伏せられる。
成長した分腕力でも明らかに差をつけられてしまった。地面に押し付けられたまま大声で怒鳴られるのには腹が立ったが関係ない。アスラを使うのには何の支障もないのだ。
轟音が響く。
戦争映画やアクション映画で聴く爆撃の音に似ているなと思った。破壊の衝撃が押し付けられた地面を通して伝わってくる。相変わらずの暴れっぷりに内心感心してしまった。やっぱり、このスキルはアスラと相性が良すぎる。多分、他の誰に使用したとしても、ここまでの効果は得られないはずだ。
「…ぅ」
ミァハさんがうめくように息を吐いた。
まだ生きている。
轟音と震動のせいで苦しそうだが、それでも意識を取り戻してくれるなら御の字だ。とにもかくにも、頭上の構造物を破壊して地上への道を作るのだ。
それから、ミァハさんを村へ最速で連れていく。
あとは長老の首根っこを掴んで治療できる戦士を総動員すればいい。
プランは決まっているのだ。
あとは余計なことを考えずに、粛々とやっていくだけだ。
「やめさせろっ! これじゃ試練がっ!」
「愚弟! ミァハさんを助けたいのはわかる! けど!」
うるせえなぁ。
姉二人の言葉に思わず苛立ちを覚えた。
頭上から降ってくる罵倒の言葉が懇願の言葉に変わってきた。どうやら成長した姉二人の力を持ってしても、今のアスラを止めることはできないみたいだ。
いや、違うか。
姉二人も本当はミァハさんを救たんだ。
もちろん、イナンナさんも。
「……すごい」
なぜか、この轟音と震動の中でもその呟きは聞こえた。
アスラを止めることができるとすれば彼女だけだが、なぜかなにもせずにただアスラを見つめていた。その内心までは当然わからなかったが、とにかく反対するつもりはないようだった。
それだけで十分だ。
あとはとにかく地上を目指せばいい。
けれど、思ったよりも深くまで落ちていたらしい。上の階層をいくつかぶち抜いたはずなのに、まだ外につながっていない。
「愚弟っ!」
とうとう堪忍袋の緒が切れたのかジーナ姉に胸ぐらを掴まれて引っ立てられた。そのままメンチを切るように引き寄せられる。文字通り鬼の形相で真正面から怒鳴り散らされた。
「これは大事な試練なんだ! ミァハさんだって死を覚悟してる! それを台無しにするつもりか!」
「命の方が大事だろ!」
怒鳴り返す。
姉の目はまるで怯んでいない。こっちだって引くつもりはなかった。
「それに、試練の内容は三日間過ごせばいいって話だろ」
「は?」
「だから、迷宮をめちゃくちゃにしても三日この場にいればいいんだろ! 更地にしてから安心してその場で過ごせばいいじゃねえかっ!」
「あんた、ほんとに脳みそ湧いてんじゃないの!」
どごん、とイーナ姉からゲンコツを脳天に叩きつけられた。
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