道中
集落から迷宮までの道のりは獣道そのものだ。
以前は長老の空を飛ぶ魔法であっという間についたが、本来であれば徒歩で数日かかる距離にある。しかも整備された道もなく、迷宮から飛び出した魔獣が生息しているので下手をすれば着く前に命を落とす危険もあった。
戦士候補生が迷宮近くで実習を繰り返すのもそれが理由だ。魔獣が集落に降りてきた場合対処するためにはこの周辺で生き残れるだけの力量がいる。それを養うことが彼らの仕事なのだ。
だから、ほぼ子供の集団でしかないおれ達が森に入ることは本来異例中の異例。過去にやらかした馬鹿を除けば、前例のないことなのかもしれなかった。
「あの守衛、すんごいキモい目つきしてなかった?」
「してた。見たことないメスだからってお近づきになりたい感マシマシすぎ」
「仕方ないでしょ。あいつら女と無縁なんだから」
なんだこのエグすぎるキャバ嬢みたいな会話は。
森に入った途端に交わされた無意識トークにそっと距離を取る。アスラもドン引きなようで会話に混ざろうとしなかった。
「さて、と。ここからよ、あなた達。他の連中はもう迷宮に向かってるから私達がおそらく最後尾。狙い通りにね」
突然の切り替え。
ミァハさんは真剣な表情を浮かべ、おれたち一人一人を見る。
この場にいるのは六人だ。
ミァハさん、姉二人、おれ、アスラ。
そして、謎の人物である。
…いや、本当に誰なんだろう。
さっきの作戦会議の後、ここまでの道中でいつの間にか現れたのだ。誰とも会話もしないし、何故か誰もそれについて言わなかったので何も言わなかった。言わなかったけれど気にならないと言えば嘘になる。
ただの地味キャラというよりも存在感のなさがすごすぎて暗殺者と言われても信じてしまいそうなほど異質さがあった。
性別はもちろん女性。しかも、ミァハさんや姉二人よりも遥かに美人だ。ただ、顔立ちが綺麗すぎてどこか作り物めいた印象を受ける。スタイルはもちろん抜群。背だって高い。なんというか目の保養になる美女って感じだ。
「愚弟。愚弟の作戦をもう一度言え」
謎の人物をじっと見つめていると姉から横槍が入った。
いや、打ち合わせの流れとしては正しいのかもしれないがそれよりもこの人に言及した方がいいんじゃなかろうか。
けれど、場の雰囲気もそういう感じじゃなかったので、仕方がなく一旦棚に上げることにした。
「ジーナ姉の魔法を使って、森ごとパニックを起こします。魔力についてはおれのスキルも使ってバックアップするので、小一時間続けたらそのまま乗り込みましょう」
出来るだけシンプルに伝えた。
ジーナ姉の得意な魔法は植物を操ること。それにおれのスキルで強制執行を行い、ブーストするのである。姉を操ることに抵抗がないかと言えば嘘になるが日頃の扱いを考えればこの程度の下剋上は許されるはずだ。
実際、さっき話した時もジーナ姉は特に抵抗もなく賛同してくれていた。
「なぁ、なんでおれじゃないんだよ」
逆に、何故かアスラが拗ねているんだが。イーナ姉の視線も痛い。
「だから言ったろ。お前は最終兵器。ここぞの時までとっておくんだよ。あー、それとなんですが」
適当な言い訳をしつつ、今、もっとも必要な質問に強引に切り替える。いや、発言できる時にしとかないと後から後悔するのだ。
「この人はどちら様ですか?」
おれの質問に全員の視線が件の人物に注がれた。
そして、ミァハさんが一言。
「あなた、誰?」
衝撃すぎて、質問したおれの方が固まってしまった。
【ペコからのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が夜分の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




