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試練 五


「ちょ、ちょっと、どうしてそんなに簡単に教えるのよ!」

 

 ミァハさんは慌てた様子で横槍を入れてきた。

 さっきまで悦に入った表情を浮かべていたくせに流石に黙っていられなくなったんだろう。おれもここまで素直に教えてくれるとは思わなかった。姉とは言え、お互い儀式を受けるライバルだというのに。


「何を言ってるんです? 姉が弟にものを教えるのは当然の責務でしょう?」


「ミァハさん。愚弟は愚弟ですが私たちは愚かにならないように努めていますので構わないでもらえますか?」


 姉二人は敵意のこもった視線で迎え撃つ。

 ミァハさんもその態度に唖然としたが、すぐに呆れたと言わんばかりに深く息を吐いた。


「驚いたわ。あなた達、そこまで身内に甘いなんて」


「よく言いますね? 人の弟を誑かそうとしたくせに」


「ミァハさんはふしだら」


「…しかも、相当甘々ね。まったく、ふしだらなんて言葉どこで覚えてきたんだか」

 

 おや、と流石に気づく。

 どうやら、ミァハさんと姉二人は仲が良いようだ。村外れに住んでいるおれたちは他の連中との交流が少ない。だから、友達関係はある程度知っていると思っていたんだけれども。まぁ、兄弟の交流関係なんてそれほど気にするもんじゃないか。まして、異性であれば尚更だろう。


「あの、いいですか?」


 ミァハさんから逃れたアスラが何故かお行儀良く手を挙げた。

 質問をしたいという意味で間違いない。

 普段からは考えられない態度なので驚いたが、姉二人の圧がなんだか強まった気がして茶々を入れることはやめておいた。

 姉と弟の世界があるように、女同士の世界というのもあるのかもしれない。


「なによ? 聞きたいことがあるなら普通に聞けばいいじゃない。そんな回りくどい真似してどうすんのよ」


「アスラちゃんは素直だから可愛い。だから、素直にすればいい」


 どうでもいいがジーナ姉は言葉遣いがさらにおかしくなった気がする。

 イーナ姉はイーナ姉でキツさの中に柔らかさが見えているようないないような。お互いの姿が変わったというのに、以前のままの態度をとれというところは感心した。

 変な態度をとるようだったら間に入ろうかと思っていたので杞憂だったことに安堵する。


「それじゃ、普段通りでいきますけど。…あの、つまり一緒に迷宮に入らない方がいいってことですよね? だったら、別々に入れば」


「はい零点。それじゃ意味ないでしょ。しかも先に入った方の負担が大きすぎる」


「おつむの足りなさがまたあざとい」


 相変わらずの距離感。

 この三人のやりとりを黙って見ているのもよかったが、オチが見えないのはよろしくない。そもそも、今は儀式の開始までの準備時間だ。情報の足りないおれたちにとっては貴重な時間だし、なにより作戦タイムを取る最後の機会になるのかもしれないのに、このままやりとりをするのも如何なものか、と考えて気づいた。

 

 ああ、なるほど。初めからそのつもりだったのか。


「で、あんたはどう思ってんの?」


「愚弟。黙っていれば状況が良くなるというのは嘘。喋らないと何も前に進まない」

 

 これが作戦会議だったのだ。

 姉達の慈悲深さに、おれは改めて感謝したのだった。  


 そもそも、弟ごときが姉の敵にはなれないのである。二回目の人生で悟ったこの世の真理である。


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