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試練 四


「えっと、お久しぶりです」


 何故か他人行儀な挨拶をしてしまった。

 正座をさせられながら、仁王立ちする二人の姉を見上げている。

 こんな理不尽な状況なので我ながら反骨心マシマシでもおかしくないのだが、姉二人の姿があまりに変わりすぎていて何も言えないでいる。

 そんな哀れな弟を前に、姉二人は実に愉しそうな表情を浮かべているのだった。

 いや、本当になんだこの状況。


「はぁっ? たかだか一月程度会わなかっただけで何言ってんのあんた。それとも、あたしのことなんて思い出したくもなかったかしら? あんた、ずいぶん偉くなったもんねぇ?」


「愚弟は愚弟らしく愚弟として行動すればいい。大事な姉と再会したなら真っ先に挨拶に来るのが当然」

 

 各々が好き勝手言ってるが特に気にする必要もない。

 大事なのはこの状況で下手なことを言うとそれだけ面倒なことに巻き込まれる可能性が高いってことだ。

 姉の癇癪ほど面倒臭いことはない。拗ねられたらそれこそ大事なのだ。

 

「もうしわけありませんでした」

 

 われながらせいしんせいいをこめたしゃざいだった。

 …いや、ふざけるのもいい加減やめておこう。予想していたことではあったが、実物を眼にするとやはり調子が狂うのだ。

 

 姉二人は、これまた美人に成長していた。


 しなやかに伸びた四肢と出るところが出て引っ込んでいるのは母譲りか。鬼の一族特有の堀の深さがその素晴らしいスタイルと合わさって艶やかな美貌を引き立ている。…いや、九歳児の女子二人に対して思うことじゃない。ないが、現実にここまでの美人がいるとなれば、男として感想を偽ることが出来なかった。

 まぁ、心の中で思うことくらいは自由だろう。

 少なくとも、姉二人には弟の下心なんてわかるはずもないのだから。


「っ…ふん、バカの一つ覚えみたいな謝罪だこと。少しくらい反論したらいいんじゃない?」


「愚弟は愚弟らしく愚弟として行動しろ…っ」

 

 うん、やっぱりおれの知る姉二人そのものだ。

 その事実に安堵を覚えるとともに、いい加減正座が辛いので説教が終わらないだろうかと祈る。

 視界の端には憮然とした表情を浮かべるアスラとそのアスラを背後から抱きしめながら困ったように微笑んでいるミァハさんがいる。

 アスラが何か言おうとするとミァハさんが嗜めているので助け舟は期待できそうにない。おれが姉二人からいじめられているというのに酷い話である。しかも、姉に詰られる度にミァハさんは愉しそうに笑みを深めているので、おれは関わる人選を間違えたことを確信した。


「んで? 少しは理解したかしら?」


「それはもうじゅうじゅう。おとうとはあねのどれいです」


「愚弟。誰もそんな当たり前のことは聞いてない」


 当たり前のことだったのか。

 カルチャーショックの恐ろしさを味わいつつ、姉二人に対して何言ってんだおめえ状態だったので正直に言った。


「なんのことを言ってるの?」


「ダンジョンのルールの話よ。なに、あんたまだ理解できてないわけ?」


 そりゃ、いきなり正座させられて奴隷扱いされたら頭ぱーになってもおかしくないだろ。そう言いたいのを我慢して、おれは頭を切り替えた。


「…ダンジョンに踏み込むなら代償を覚悟せよ?」


「愚弟。それは大前提の話」

 

 ぴしゃりとジーナ姉は言った。


「けど、それが正解。ダンジョンは足を踏み入れた者に対応して《《脅威度》》が増していく。私たちや他の戦士候補生と一緒に踏み込んだら、それだけ《《危険が増えるということ》》」


「つまり、大人数で挑んだ場合はその規模に応じた魔獣が襲いかかってくるってことよ。しかも、強いやつがいればいるほどやばい魔獣が出てくるってわけ」


 わかったでしょ、と姉二人は付け加えた。

 言っていることはわかるが意味はよくわからない。

 けれど、さっきミァハさんが言った意味がよくわかった。


 正々堂々戦いましょう。

 

 つまり、


「…もしかして、迷宮に行くまでも試練?」


「行ってからもよ。全員仲良く試練突破ってのはあり得ないってこと」


 やっぱりバトルロワイヤルじゃねえか。

 

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