試練 二
正々堂々戦いましょう。
その一言に込められた意味はどう考えて一緒に生き残ろうという類のものじゃない。明確な敵対宣言というか悪意はなくとも明確な拒絶の意味が込められているはずだ。
その事実に、おれはまたかと頭を抱えたくなった。
あの馬鹿親父、肝心なところが間違ってるじゃねえか。
何が三日三晩生き残ればいいだ。やっぱり、ライバルを蹴落とすバトルロワイヤル形式だったってことか。
「いや、ちょっと待ってください。あの、試練って迷宮内で生き残ることができればいいっていう話じゃないんですか?」
「え?」
困惑した表情で察した。
やっぱり間違いない。明らかにおれたちには情報が不足している。
確信に至ったからこそすぐにでも情報を集めなければならない。
そのためにやるべきことは一つだ。
「ミァハさん」
「な、なに?」
「教えてください」
素直に頭を下げる。
相手の反応は見ない。見ればそれだけで卑しさが勝って、何も教えてくれなくなるとわかっていたからだ。
「お、おい? なにやってんだ、トール?」
「お前も頭を下げろ」
「ちょっと、やめなさいっ」
慌てているミァハさんとアスラ。
どうやら頼む相手は間違えていないらしい。無視されることもなく、適当にあしらうこともなかった。そもそも、宣戦布告じみたことを言ってくれる時点で信用が出来るのだ。
子供でしかないおれを対等に扱おうとしている。当然、ミァハさんにしてみれば罪悪感を薄めるための行いでしかなかったろうが、そういう感情を覚える時点でいい人なのである。
そう、おれ達にとっていい人であることがまずは大事なのだ。
「すいません。本当に知らないんです。せめて、儀式の内容を教えてくれないと何もわからないまま迷宮に行くことになる。それだけは嫌なんです」
「嫌って言われても、ね。そもそも貴方たちはどうして儀式に出ることが出来るのかしら?」
「どうしてって言われても。長老やアグニルさんに言われたから…」
アスラ、お前。
あまりに正直な言葉に背筋に寒気が走った。
おれが頭を下げるのを見て慌てているのはわかるがこのタイミングでその返答はありえない。
彼女は戦士候補生だ。
つまり、おれたちよりも長い時間訓練を積んできたのだ。
それがぽっと出の、しかも七歳児の相手なんて普通なら馬鹿らしくてやってられないはずである。それなのに、志望動機まで他人任せなんて言われたら、それこそ屈辱感で殺したくなってもおかしくないはずである。
折角のチャンスを潰したどころか明確な敵を生み出しかねない状況。
流石に頭を下げてるだけではダメだと思い、弁明をしようとして、
「…ああ、もうっ! そんな顔しない! わかったわよ、教えるからっ!」
何故か、ミァハさんがアスラを抱きしめていた。
あっけに取られたがなんとなくだがうまく行ったことを確信する。やはり正直さが一番大事なのだ。
「ありがとうございます」
「まだ何も教えてないんだけど?」
ぴしゃりと言い捨てられる。冷たい視線を受けるがまっすぐに見返した。
ここで愛想笑いを浮かべられるほど器用ではないのだ。
「…ほんと、ずるい。これじゃ私が悪者みたいになるじゃない」
呆れ半分の言葉の後、ミァハさんは言った。
「迷宮には迷宮のルールがあるの。それを教えるから、貴方達も自分で考えなさい。それがわかれば生き残れるはずよ。必死で頭を使いなさい。わからなければ、そのまま飲み込まれるから」
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