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試練


「よく集まった。それでは儀式を始める」

 

 長老の宣言は実に簡潔な一言で終わった。

 けれど、それに文句を言いそうなやつは誰一人としていなかった。おれをもちろん含めて。

 雰囲気が重いのだ。

 祭りの始まりのような華やかさや期待感がまるでない。どちらかと言うと厳かさが目立っているような気がするが、それだけではないようにも思えた。

 おれ達は今、長老の家に集まっている。

 てっきり現地集合かと思ったが、壮行式のような真似をすることとなったのだ。いつもの広間に参加者が集まっている。他にも大人達も大勢おり、父の他にも母の姿もあった。

 参加者は広間の中央に集められ、各々が好きな格好で座り込んでいる。

 右隣にはアスラがおり、らしくもなく緊張でがちがちになっているようだった。反対側には恐らくは二十代の戦士候補生。真剣な眼差しはこの儀式に対する思いが表れているかのようにも思える。

 ふと、思い出した。

 そうだ、アスラを救いにダンジョンに潜った時に護衛についてくれた人のはずだ。あの後はすぐに修行として森に入ったから今日までお礼を言う暇もなかったのだった。

 不意に目が合う。

 一瞬驚いたが、いい機会だからとお礼を伝えようとして言葉を失った。


 恐れ、だろうか。

 

 何故か彼女の瞳にはそんな感情が浮かんでいるように見えたのだ。

 

「おい、トール…!」

 

「んぁ?」

 

 変な声が出た。

 緊張でガチガチだったくせに、アスラのやつが険しい表情でおれを睨みつけていた。まぁ、呼び声はめちゃくちゃ小声だったのでまだ緊張しているのは間違いないだろうが。


「なんだよ?」


「お前、なんでミァハさんを見てんだよ…!」


 ミァハさん?

 ああ、左隣の人かと理解する。アスラの知り合いかと思ったが、多分集落の友達の姉とかのつながりだろう。どこかで見たような顔立ちな気もするのでおれでも知ってる奴の肉親かもしれなかった。


「いや、なんでって…」


「いやらしい目で見やがって、困ってんだろ…!」

 

 何言ってんだ、こいつ?

 いちゃもんをつけれらたのはわかったが、突然すぎて意味がわからない。怒りが湧く前に困惑が先に出てしましい、おれは素直に理由を話した。


「お前が攫われた時に一緒に助けてくれたんだよ。覚えてないのか?」


「え?」


 険しい表情が一瞬で消えた。

 アスラは慌てた様子でミァハさんを見ている。おれも一緒に視線を向けるとミァハさんは微笑みを浮かべていた。


「久しぶりね、元気そうでよかった。まさか、この儀式に参加するなんて思ってもみなかったわ」


 穏やかな口調だ。

 男も女もどちらも荒々しい気性が多いこの集落においては珍しい雰囲気の持ち主だ。年代が一つも二つも上で関わることがなかったせいで一度も関わることはなかったが、なるほど、随分と惜しいことをしてしまったと後悔した。

 なんというか、こう、みんなを癒してくれるような雰囲気があるのだ。

 

「あ、あの、その節はありがとうございました!」


 急に大声を出すアスラ。

 周囲が何事かという視線を向けてくるが、まぁ、気にしても仕方ない。それよりもお礼を言わない方が、もっと問題だろう。


「本当に助かりました。またこうしてお会いできてよかったです」


「いえいえ、私はただあの人の指示に従っただけだから」


 あの人とは伊藤咲奈のことだろうか。

 そういえば、こういう行事も好きそうなのに姿は見えない。まぁ、流石に村の儀式だからと遠慮したのかもしれない。いや、多分どこかで隠れて見ているはずだ。やはり、あの女がこんなイベントごとを見逃すとは到底考えられなかった。

 

「でも、本当に驚いたわ。まさか、こうして一緒に参加することになるなんて、ね」


「ええ。これも何かの縁ですし、ぜひ一緒に生き残り」



「悪いけれど恨みっこなしよ。あの時は守る側だったけれど、今回は敵同士。正々堂々戦いましょう」


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