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地獄の四苦八苦 終点


「うん。思ったよりも随分と上達してる。さすがおれ達の息子だ」


 思いっきりぶん殴ったはずなのに父親は微動だにしていなかった。受け止めたとかそういう類じゃない。無防備のまま拳を受けて、何のダメージも負っていない。ジンキで強化したおれの拳が父親の鳩尾あたりを正確に撃ち抜いたはずだったのに。

 会心の一撃を期待していたのにこれ以上ないほどの肩透かしを食らった気分だった。

 何をしたのかも何をされたのかもわからない。

 けれど、少なくともおれは父を殴ることすら出来ない事実を叩きつけられた。


 世界最強の戦士。

 

 その二つ名の意味をおれはまだ知ることもできないらしい。


「おー。えっぐいにゃー。父親相手でも容赦なしだにゃ」

 

 バスにゃんがおれの背中に寄りかかってきた。

 さすがにお痛が過ぎたらしい。すぐに拘束とはいかなかったようだが、このまま追撃しようとすればそのまま取り押さえられるだろう。

 いや、そんな必要もないと思うんだが。


「いい加減、状況説明の一つでもしてほしいんですよ。そもそも、今回の儀式に参加するのだってここに来てから知ったんですよ? 修行をつけてくれることはありがたい限りけど、ろくすっぽ説明もないし、姉さん達まで参加するとか。もう色々わけわかないんですよ」


 一言で言い切ってから、おれは軽い目眩を感じて膝をついた。

 呼吸が苦しい。

 ここまで肉体も精神も酷使した状態だったのだ。限界はとうに超えていたし、そんな状態だったから、これまで父に追求することもしなかった。

 まぁ、するのが面倒だったというのが一番の理由ではあるが。


「だってさ。何か言うことはにゃいのかい?」


「ふむ。すまん」


 一言。

 相変わらず簡潔な言葉に肩の力が抜けた。

 いや、なるほど。世界最強の戦士ってのはこういうメンタルをしてなきゃつとまらないのかもしれない。


「いや、おれとしてはあくまで修行に集中してほしくてな。そもそも七歳で儀式を受ける前例もない。おれだって修行の頑張りを見るまでは現実的じゃないとは思っていたが、お前達がすごかったんだ。もう戦士候補生達じゃ相手にならないだろう」

 

 随分と高い評価である。

 戦士候補生とはあくまで十代から二十代の選りすぐられた集落の者達を指す。連れ去られたアスラを救うため、ダンジョンに潜った時に伊藤咲奈が連れていた集団がそうである。おれは守られるばかりだったので、誰もが相当の実力を持っていることは理解している。

 

「なら、どうして修行を急ぐんですか?」


「? さっき言ったじゃないか。お前の姉達も儀式に参加するからだ」


 あいつらは今年で九つになる、と父はおれでも知っていることを言った。

 おれが聞きたいのはそこじゃない。


「だから、姉さん達が参加するからってどうして修行を急ぐんですか?」


「それこそ愚問だな」

 

 何故か、父は得意げに笑った。


「お前の姉達がもっとすごすぎるんだ。さすがは、俺たちの娘だ。下手をすれば、村でも指折りの実力を身につけているぞ?」

 

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