地獄の四苦八苦
「はいはい。あと500回だから、頑張ってー」
「…く、そが、ぁああっ」
重い。
ただただ重い。
背中に乗ったバスにゃんが能天気に言ってくれるが七歳児の子供に向かって言う回数じゃない。じゃないが、それでも修行としては極めて有効なので、おれは黙って従っている。
スクワット。
生前もことあるごとにやってきた筋トレである。関節を酷使する行為であることは間違いない。が、これほど下半身を強化するのに向いている筋トレはないのだ。
ただし、重量をつけて500回やるなんて真似は前世ですらやったことはない。ましてや成人男性なんて目じゃないほどの重量を担いでいるなんて正気の沙汰じゃない。
それを可能にしているのがジンキだ。
「うんうん、そうそう。そうやって出力を絞ればオーバヒートにゃんて起こしようがにゃい。どんな力もコントロールすることでこそ発揮されるんだ。肉体の強化にゃんて大雑把にゃことを考えるんじゃにゃく、肉体のどの部分を強化し、どの部分に負荷を置くか。トレーニングだから負荷を増やした方がいいんだけれど、その負荷のコントロールが甘すぎると壊れちゃう。その見極めをしっかりするんだよ」
「ふんぐ、ぬら、ばぁはぁああ…っ」
にゃーにゃーうるせえ。
そう言いたかったが悲鳴をあげる足腰のせいで何も言えなかった。いや、マジで辛い。とっくに足の感覚は無くなってるし、腰の痛みのせいで吐きそうなくらいだ。
わかってる。普通ならこんな馬鹿げたトレーニングは絶対できないし、やる意味がない。トレーニングってのは適度な負荷でやるから意味がある。昔のど根性漫画みたいなやり方はこれだけやったら説得力あるんじゃねって作者が考えただけの馬鹿なやり方なのだ。
それでも強行するのはバスにゃんの指導だからだ。やればやるほど成果を感じることができるんだから、やらない理由がないのだ。
初めは一回だってできなかった。
けれど、次にやったときに百回近くできた。今はもう千回を超えてから数えていない。七歳児が、というか普通の人間がこんなにスクワットができるはずがないのだ。全てはジンキのコントロールのおかげ。それを学ぶ方法としてこれが最適だと言われればやり切るしかない。
なにより、相棒の存在である。
「そのまま魔力を感じるんだ。体内で回すんじゃない。全身にあることが正しいと認識を変えろ。そこからがスタートだ」
「────」
父の言葉にアスラは行動で示した。
揺らぐことなく全身を魔力が包み込んでいる。威圧感のようなものはないが、あそこまで穏やかに静止している様子を見るのは初めてだ。仮に、おれが何かを全身に纏うようにしてもああはならない。
あいつは確かに、一週間の間真面目に修行していたのだ。
「ほらほら、ペースが落ちてるよー? もう限界かにゃー?」
「ふんぬらばっ…!」
負けられない。
とにかく少しでも一週間で離された時間を縮めたくてスクワットを続けた。結局、地道な行動こそが一番の近道なのだと自分に言い聞かせるのだった。
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