地獄の三番煎じ 終点
「…元に戻るんですか?」
「え、戻りたいの?」
「嫌だ。このままでいい」
「だってさ」
だってさじゃないが。
小学生から高校生へ強制的に成長させるなんてどれだけ非人道的な行いか。なにより大人の都合で青春時代を奪うなんて馬鹿みたいなことを見過ごして良いはずがない。
けれど、当の本人と唯一の保護者枠の父親が気にしていないのが問題だった。いや、早く大人になっても良いことなんてなにもないんだ。アスラにはわからないだろうが父になら…いや、これだけ自由に生きているんだからそんなこと気にしてないか。
「いや、お前本当に大丈夫なのかよ。一週間でそこまで成長するなんて普通じゃねえだろ」
「普通のことをやってちゃ足りないから修行してんじゃないの?」
「…いや、まぁ、それはそうなんだけど」
あれ、と疑問にも思う。
そもそも、おれもこいつも無理やり連れてこられたはずである。おれは自業自得の面もあるが、こいつは巻き込まれた側のはずだ。どうして、ここまで前向きなんだろう。美味い飯を食える以外で何も良いことはないはずなんだが。
おれの疑問を他所にアスラが不適な笑みを浮かべた。
「俺はこの一週間修行漬けだったんだ。その間に先に行ったからって焦んなよ」
「…あ?」
「まぁ、戦士の儀式まではまだ少し時間はあるんだ。その間に精一杯修行して、足手纏いにならないようにしろよ? おねんねトールくん?」
殺す。
一瞬前まではあった友人を想う清い心は消し飛んだ。そうだ。こいつが女だろうが、中身はアスラのままだった。ここまで露骨に舐めてくれたんだ、落とし前はきっちりつけさせなければ気が済まない。
そもそも、こいつと相棒なんて考え方が間違いだったんだ。
おれの方が上だ。こいつはあくまでおれの下なんだ。
「うるせえな。人が折角心配してやったてのによぉ。図体だけデカくなったって何の意味もねえんだぞ、あ? おれの足引っ張らねえようにしろよコラ」
「はっ、口は達者でもタッパはちっちゃいままのトールくん? 少しは鍛え直してからでかい口をたたいたらいいんじゃねえの?」
あー、苛ついてきた。
なんで、こいつはちょっと背が伸びたくらいでここまで調子に乗ってやがんだ?
へらへらと笑っている表情も気に食わない。そもそも目線が上からってのがありえねえ。こいつから見下されることほどの屈辱は存在しねえのだ。
気づけばガンのつけあいになっているがもう、そんなことはどうでも良かった。
こいつが先に行った気になってるのが気に食わねえ。絶対に追い越してやる。
「うん。それじゃ修行を始めるか」
いけしゃあしゃあと父が言った。
言いたいことはまだまだあったが、
「「望むところだっ!」」
おれは気合一閃、全力で取り組むことを決めた。
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