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地獄の三番煎じ

バスにゃんの言葉通り、おれは一週間の間ろくすっぽ動けなかった。

 

 ほぼ毎日起きては飯を食って寝るの日々。その間もバスにゃんは肉球でおれの体を撫でまわし続けてくれた。ここまで献身的に治療されると感謝の気持ちが自然と湧いてくるから不思議だ。うん、遊び相手にされたことへの恨みはもうなくなった。

 飯だって肉が食えないからとバスにゃんが木の実やきのこみたいな何かをとってきてくれもしたのだ。

 その間におれはバスにゃんに色々なことを話した。

 村でのこと、アスラとのこと、この間の事件のこと。

 そして、()()()()()()


「どう? 体調の方はよくにゃった?」


 寝起きの視界にまんまるとした目が二つ。もふもふの黒い毛が暖かそうだなと思ったが、その暖かさに包まれている事実を思い出した。


「…おはよう、ございます」


「おはよ」

 

 にんまりとした笑顔が眩しい。前世では猫を飼ったことはなかったが動画サイトの猫には随分と慰められたもんだった。外回りの暇なときに見てて30分以上帰りが遅くなったこともあった。

 もしかすると、その状況に近いのかもなと思った。

 人間は忙しかったり、何か切羽詰まった状況が続くと何もしない時間が必要になるのだ。

 前世は仕事で、今回は人間排斥派。

 うん、そう考えると自分的にも今の状況を受け入れやすくなった気がする。


「で、どうかにゃ?」


「大分よくなりました。もう大丈夫です」


「そう? もう少し休んでもいいと思うけど?」


 優しい。

 けれど、寝てても何も始まらないことを前世を含めた四十年以上の経験で知っている。もふもふに包まれるのは幸福そのものだったが、時間は有限なのだ。

 

「いえ、もう十分です。今日から修行を始めます」


「…そ。にゃら、がんばろっか」


「ええ。よろしくお願いします」


 肉球が離れ、もふもふの黒い体毛から出る。

 一週間ぶりの地面は思った以上にしっかりとした感触があった。全身が軽い。寝たきりだったはずなのに、これまで感じたこともないほど調子が良いのだ。全て、バスにゃんの献身的な治療のおかげである。バスにゃんまじさいこー。

 

 太陽の日差し…は木々のひさしのせいであまりなかったが、両手を大きく広げて息を吸った。


 ああ、生きてるって素晴らしい…っ!

 

「お、起きたか」

 

 竈門に木を焚べながら父はスープのようなものを作っている。この一週間で作った手製の竈門だ。おれが動けないということで父はここでの環境を整える方針に切り替えたのだ。鍋や箸なども魔法を駆使ししながら器用に作っていた。サバイバル能力の高さに父の存在の偉大さを見直したのは内緒である。アウトドアは父の威厳を取り戻す良い機会なのだ。

 


「おい、起きたなら手伝えよ」


 アスラが言った。

 肩に丸太を乗せている姿が逞しい。

 けれど、それ以上に言いたかったことがおれにはあった。


「アスラ」


「あん?」


「お前、背伸びた?」


 明らかに成長している。

 例えて言うなら、一週間前までは小学生だった。今は高校生に見える。

 衣服も縮み、しなやかに伸びた手足が驚くほど綺麗だった。

 綺麗。

 そう、こいつを見た誰もがそう思うはずだ。


 アスラは女だった。


 七年一緒にいて気づかなかった事実。恐らくはこの修行期間で最も驚くべき事実に、おれは向き合うこととなったのだ。

 

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