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地獄の一丁目 続々

「いやいやいやいやっ! ちょっと、もう食えないってっ!」


「そうか。だが、食ってもらう」


「だからなんでっ!」


「…必要だから?」


「いや、おれに聞いてどうすんのっ!」


「とにかく待ってなさい」


「いや、だから食えねえって!」


 おれの必死な叫びを無視し、父は森の奥へ向かっていた。

 茂みの中に背中が消え、気配までも消えてしまう。

 我が父ながら意味がわからん。とりあえず食い過ぎの苦しさを紛らわせようと、同じように大の字に寝ているアスラを見た。

 いや、すげえ腹だな。


「おい、生きてるか?」


「当たり前じゃん。しあわせすぎて死にそう」


 アスラは満足そうな顔をしている。

 いや、そんな顔浮かべてる場合じゃねえんだが。


「話聞いてなかったのか、お前。あのバカ親父、まだおれらに食わせるつもりだぞ?」


「え、マジで。もっと食わせてくれんのかよ!」


「聞いたおれがバカだったわ」


 こいつは思った以上に食い意地が張ってやがる。飯が絡むと普段の二十割増くらいでバカになるのかよと七年の付き合いではじめて気づいた。いや、知りたくもなかったんだが。

 大体、俺らの体格でこれ以上食ってどうすんだと怒鳴りたい気持ちを抑え込む。こいつと喧嘩している暇はないのだ。あのバカ親父は間違いなく新たな獲物を連れてくる。その前に逃げるか何かしなければ、腹が破裂して死ぬ。

 少なくとも、おれはそう確信していた。あの親父ならおれの腹が破れても宣言通りに食わせるはずである。

 あいつは修行ではないと言った。けれど、間違いなく食わせるとも言ったのだ。

 そこに矛盾はない、とあのクソ親父は思っているのだ。

 その狙いまではわからない。わからないが、とにかく逃げなければならないのだ。食い過ぎで死ぬとか、あまりに情けなさすぎる。


「動けるか? 動けるならとっと」


「動くな。やばいやつが見てる」


 は?

 アスラの言葉の脈絡のなさに素直に反応してしまった。見れば、アスラは真剣な表情をして一点を見つめている。そちらに視線を向けて、息を呑んだ。


「魔獣」


 そこには黒猫のような馬鹿でかい化け物がいた。茂みから顔を出し、じいっとこちらを見ている。そのデカさが以上なのだ。

 

 顔だけで俺たちより遥かに大きい。

 

 その向こう側に隠れた肉体を考えるとまるで小人にでもなったような気分になる。なによりも問題なのは、愛嬌があることだ。まんまるとした目が一見すると猫のように可愛らしい。可愛らしいが明らかに違和感があるのだ。

 こんな場所にいるくせに不自然なほど愛らしい。

 明らかに野生に生きる動物としては不適格過ぎた。

 

「おい、逃げるぞ」


「いや、お前、それはおれのセリフ」


 あまりにもツッコミどころが多すぎすぎて視線を向けて、


「俺が時間を稼ぐ。とっと消化しろ」


 なぜか臨戦体制が整っているアスラを見た。

 あれだけ膨れた腹が萎み、全身から魔力が迸っている。


 それがあまりに異常すぎて、おれは言葉を失ってしまった。

 

 

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