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地獄の始まり


「どうだ、湯加減は?」


「…あーめっちゃいい」


 疲れが溜まった体が湯船の中で揺蕩っている。ちょっと熱めのお湯は父さんが魔法で火加減を調節して実現している我が家自慢の五右衛門風呂だ。もちろん五右衛門風呂とはおれが勝手に言っているだけで、この世界ではこういうのが一般的な風呂にあたるらしい。

 竈門の火が入浴者の魔法頼りになる点だけは異世界風味だが、それ以外は前世にあった風呂と変わらない。…いや、五右衛門風呂自体一般家庭にはないのだから変わらないってのは嘘だな。

 まぁ、とにかく風呂に入って気持ちいいのはこの世界でも変わらないってことだけは間違い無いのだ。


「お前が風呂好きでよかったよ。イーナもジーナも風呂嫌いだからなぁ。お前みたいにおとなしく入ってくれたらどんなに楽か」


「そのうちわかるでしょー。あー、やっぱ風呂さいこー」


 ちなみに、何故かうちの女性陣は風呂が嫌いだった。なんでも水浴びでもしてればいいくらいの感覚らしい。身体が温まるとどうにも調子がおかしくなるとか。

 風呂には自律神経を正常にする効果と血行不良解消、疲労回復の効果があると本には書いてあった。前世でのことであるが、少なくとも人体に関しての通説は間違っていないとおれは思う。

 なにより、心の洗濯になるのだ。

 頭の中で悩んでいたこともどうでもよくなるし、一度悩みを手放せば案外良い解決方法を思いつくものなのだ。

 おっさんの思考だが、こういう考え方を持っていると人生楽になる。いや、今は七歳児なのでそれほど悩み事もないんだけれども。


「しかし、もう相棒バディを組むとはな。そういうところはおれに似ちまったか」


「? 父さんも早かったってこと?」


「ああ。おれもお前くらいの時に母さんと相棒バディになったんだ」


「へぇ。…ん?」


 なにかおかしい気がする。

 というか、確か、母さんの方がだいぶ年上だったような。


「あれ? でも父さんの方が母さんよりもだいぶ年下だよね? おれと同い年の頃って母さんはもう」


「ああ。とっくに戦士だったよ。この集落では一番のな」


「え。でも、それじゃ」


「おれが無理言ったんだ。最強の戦士になるから組んでくれってな。我ながら子供だった。誰よりも強くなりたかったんだ」


「おお」


 思わず感嘆の声が漏れた。

 いや、実に男らしい。シンプルイズベスト。最強になるには最強に学べばいい。

 それを実践し、実現したのだから父親としては満点な男だ。

 

 世界最強の戦士。

 

 少なくとも、父親はその称号を持っている。


「ねえ父さん」


「ん?」


 湯船に浸かってうすらぼんやりとしていたせいだろう。

 思わず口走ってしまった言葉をおれはしばらく後悔することになる。


「おれ、アスラと最強の戦士になりたいんだ」


「そうか」


「だから、鍛えてくれない?」


 あまりにも軽い言葉だった。実際、この時は何も考えていないなかったし、まともな答えが返ってくるとは思っていなかった。けれど、


「いいぞ。明日からか?」

 

 父も軽い調子で返答したのだった。

 

「うんお願い」


 そして、その翌日から地獄が始まったのだ。

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