一家団欒
妙な空気のまま、おれは姉二人から自宅へと連行された。
アスラのやつは長老の家で真っ先にアスラの不在に気づいた女性に連れられて行った。やはり、アスラの姉だったらしい。少し険しい目つきでおれを睨んだ後、そのまま集落の方へ向かって行ったのだった。
自宅に着くと夕食の匂いが玄関まで漂ってくる。
おそらくは肉を焼いている匂いだ。魔獣の肉らしいが前世でいう豚の肉に食感は近い。クセもなく、香草をまぶして焼いたそれは姉二人の大好物だった。おれも好きだが、中年の思考のせいで刺身の方が食べたい欲求が強い。もちろん、この世界で刺身なんて食えた試しはないんだいが。あれだ、生魚の文化自体ないかもしれない。
「おかえんなさい。もうすぐ出来るからねっ!」
母の声が響く。
特に手荷物を持っていなかったおれたちはそのまま居間へと直行した。そこにはこの七年でまったく見た目の変わらない母と父がいる。
「おう、おかえり。ちょうど今出来たとこだぞ!」
鉄板を前に父が言った。
じゅうじゅうと肉汁が弾ける音と濃厚な匂いに立ちくらみにも似た感覚を覚えた。姉二人はよだれをたらしそうな勢いで見入っている。
いや、相変わらずの迫力だ。
巨大な肉塊を豪快に焼く光景自体が食欲をそそるのは間違いない。前世にあったハリウッド映画のワンシーンみたいに一家の大黒柱が鉄ベラ(のようなもの)を巧みに操って肉を仕上げる様は一見の価値がある。
食卓につき、肉が仕上がるまでを眺めるのが我が家のルーティーンなのだ。
「イーナ、ジーナ! とっと食器を出しな!」
見た目は美女のままなのに某空から女の子が降ってくる映画の母ちゃんみたいなことを言うのはなんとも言えない気分になる。ただ、それが板についているのが息子としてはなんとも頼もしい。
姉二人も文句を言わずに従っている。ちょっと前まではぶーぶー不満の嵐でおれが台代わりの木片を使ってとっていたのが嘘のようだ。
なにより、
「おい、出来たぞ! トール、まずはお前からだ!」
「ありがとう、父さん」
姉が持ってきた更にどんどん肉が盛られていく。
高音の鉄板で熱せられた湯気と濃厚な肉の香りに思わず咳が出そうになった。けれど、間違いなく旨いのがわかる。魚がいいなんて思ってた数秒前の自分をぶん殴りたくなるほどの予感にワクワクしてしまった。
「………」
「? え、なに、姉さん」
不意に。
姉二人がじいっとこっちを睨んでいることに気づいた。なんだろう、肉の盛りが気に食わないんだろうか。おれから配られたのが気に食わないのかとも思ったが、いつものことなので違うだろう。肉だってまだまだ一杯ある。父親にお礼も言ったし、特段何か失態をやらかしたわけでもないはずである。
おれが二人を見つめても無言なのも気になった。いくら食事時とは言え、用があればずけずけ言ってくるはずなのに何も言わない。姉二人と母、そして自分の分を盛った父ですらその違和感が気になったようだ。
「どうした? 何かあったのか?」
心配そうな父の声。
野菜サラダを持ってきた母も怪訝そうな顔をしている。
食卓に全員が揃ったのを見計らって、姉二人は言った。
「「トールが相棒を作ったって」」
…え、その話いる?
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