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姉二人


「それで、こんな時間まで集落の外をほっつき歩いてたってわけだ。つい昨日攫われたばっかりのアスラちゃんを連れ回して」


「本当、この愚弟は何も考えてなさすぎ。大人達の目を盗んでやりたい放題が罷り通る歳じゃないって知らなかった?」


「わかった。姉ちゃん、わかったからおろしてくれ。いい加減頭に血がのぼっちまう…」

 

 アスラへの謝罪と約束をした後。

 おれたちは腹も減ったことだしとそれぞれの家に向かった。小一時間ほどで集落に着く道のりだったし、歩き慣れてもいたから油断していた。この季節にしては妙に早い日暮れを前に駆け足で帰ったが、間に合わなかった。

 ちょうど集落に入ると同時に見つかってしまったのだ。

 よりによってこの二人に。


 イーナとジーナ。


 ついこの間まではろくすっぽ喋ることすら出来なかったくせに、今では魔法まで使って弟をいじめる傍若無人な姉二人である。

 

「あ、あの、イーナさん、ジーナさん。それくらいで十分じゃ」


「ちょっと、その堅苦しい言葉遣いはやめて。イーナ姉でいいわ。あたしにとってあんたも兄弟みたいなもんだし」

 

「私もジーナ姉でいい。今更距離を取られるのは悲しいぞ、アスラちゃん」


 なぜか、この二人はアスラに甘い。

 未だにおれはイーナ姉の魔法で顕現した木の蔦のようなもので逆さ吊りにされているのに、アスラだけは抱きしめたり頭を撫でたりしている。

 弟虐待ここに極まれり。

 文句を言えばその百倍苛烈な仕打ちを受けるので黙って事の成り行きを見守るしかなかった。

 いや、前世では一人っ子だったせいでよくわからないがこの世界の姉ってのは弟に容赦無く魔法使って折檻するもんなんだろうか。しかも、精神年齢的におれの方が上だから年上の弟に対して容赦なさすぎる。


「で、愚弟。何をしに行ってたのかしら? 昨日誘拐事件が起きたせいで厳戒態勢の集落からわざわざ抜け出して」


「そうね、愚弟。大事な儀式前の貴重な修行を中断してわざわざ迎えに行った姉を無視して抜け出すなんて、さぞかし大事な用だったんでしょうね?」


 足首に巻き付いた蔦がぎりぎりと締め付けてくる。

 姉二人の怒りは相当深いものだったようだ。いや、まぁ、儀式前でピリピリしているのは理解していたが弟に殺意を向けるほどとは思いもしなかった。本当にどうしてここまで間が悪いのか。けれど、あの時間は絶対に必要なものだったと自分自身に言い聞かせる。何事も仕込みは思いついた時点で行うべきなのだ。


 まぁ、それはそれとしておれの言い分をこの二人が聞くはずないけどね。


 姉が弟の言い分を認めることなどないのだ。その真理をこの七年で十分に理解している。 


「あの、トールは悪くないんです…だ」


 アスラが助け舟を出してくれた。

 …いや、どうでもいいけどこいつは本当におれの姉二人には弱い。というか、普段のぶすっとした表情まで鳴りを潜めるほど弱々しい態度はどうかと思うのだ。どうにも姉のどっちかかあるいは両方に惚れてる疑惑がある。おれとしてはどっちでもいいのだが、こういう時までしおらしい態度をしていては好かれるものも好かれなくなるんじゃないだろうか。

 ここは男の魅せ時だぞ、アスラと視線を送る。

 なぜか、あいつは顔を真っ赤にした。

 あ、だめだこいつ。姉二人の登場で完全に舞い上がってやがる。

 

「ふーん? なに、愚弟から何か言われた?」


「その…」



相棒バディになってくれって。責任も取るからって」



 なぜかさらに顔を真っ赤にするアスラ。

 いや、なんだその言い方は。

 普段と違いすぎる態度となんだか誤解されそうな言い回し。おれが驚愕しているとなぜか姉二人も言葉を失っておれを見ている。

 いや、おれなんかやっちゃいました?


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