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反省会 四


「じゃが、それはあくまで表向きのことじゃ。ワシらとて痛みはあった、悲しみもあった。それを取り繕えるほどの年数を生きた者が多いというだけの話なのじゃ。それが出来ぬ者もおる。だからこそ、ワシらはお主を村に迎え入れたのだ」


「? それはどういう」


「お主がいることでこの村におる不穏分子を炙り出すことができる」


 ぎょっとした。

 少なくともアスラの前で言っていいことじゃないとは思った。

 

「ん。お主ならその程度のこと察しているのかと思ったが?」

 

「いやいやいや、誰もそんなこと考えないですよっ」


「そうかの?」


「そうですって」


 慌てて否定するも長老は本気で不思議そうな表情を浮かべている。

 いや、おれだってそこまで非人道的な考え方をしてるわけじゃない。ただ、まぁ、言われれば納得できる程度である。


「無論、それだけではない。人間の赤子と言う点が大事だったのだ。ともにこの村で育ち、この村の子供達と生きていけるのなら、それがなによりの希望になると思ったからじゃ」


「希望、ですか」


「赤子は尊い。それだけはどんな種族であろうと変わらん事実じゃ」


 理屈ではなく、本能的なものに対する訴え。そこまで考えてのことだと思えば、ある意味これまで感じていたとある違和感にも納得がいく。


 なぜ、おれの家だけが集落の外にあったのか。


 父と母。アグニルとシーナの夫婦が最強の戦士であると言う点を差し引いても、おかしなことだとは思っていたのだ。村を外敵から守るためにあの場所に家があったのかと思ったが、むしろおれ自身を守るためにあの場所にあったということだ。

 赤子の頃は気づかなかったが、もしかすると元々彼ら夫婦も姉二人もあの場所に住んでいたのではなかったのかもしれない。

 

「七年の時を経て、共存の道を歩み始めた。わしらの願いはある種叶ったと言っていい。だが、だからこそ不満を持つ者が声をあげ始めたのじゃ。それはこれからも続くじゃろう」


「また、村の人が敵になると?」


「おい、トールっ!」


「うるせえ。お前黙ってろ。悪いが、ここははっきりとしとかないといけないんだ」


 村の人間がどれだけ人間を、おれを敵視しているか。

 それは明確に必要なデータだ。もちろん、長老が言うことが全てではないことは重々承知している。下手をすれば噂話レベルのことだってあることだろう。


 けれど、その噂話が大事なのだ。


 人間関係の拗れ。その厄介さは前世においても十二分に理解している。特に経営者なんて人種はその拗れ方が半端ではないのだ。愛人関係、敵対関係、裁判沙汰。何気ない世間話の中で出てくる話の全てが地雷だったり、経営者個人のことだけではなく、会社存続に関わるものだったりする場合もある。

 そういったことを知っておくことはリスクヘッジとして十分に大事なことだし、関わった人間としての身の安全を保証するためには絶対に必要なことなのだ。

 

 なにより、家族を守ることにつながるのだ。

 

 両親二人はもちろん、おれには二人の姉もいる。姉といえども、今はまだ子供なのだ。大人の悪意に対抗できるわけがない。

 そのためにもおれがすべきことはいくらでもあった。

 誰が味方か敵かを把握する。敵がわかれば、敵が何をしたいのかを仮定する。その上で、この村で暮らしていくためのルールを守らせる、あるいはどう逆手に取るかを想定し、備える。

 そのためにも少しでも情報を聞き出す必要があった。


「残念ながらその可能性は十分にあるじゃろうな。誰が、と言う話なら無意味じゃ。誰しもがそうなる可能性はある。何度も言うがそれだけ失ったものが多すぎる」


「だったら、やることは決まってますね」



「これまで通りに過ごし、囮の役割を全うする。その上で、おれがこの村での地位を得ることができれば、共存の道は続くってことでしょう」



 おれの言葉に長老ははじめて笑みを浮かべた。


「この村で生き、外の世界を知り、その上でこの村に貢献する。共存共栄。それこそがワシの願いじゃ」

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