反省会 二
昔、戦争があった。
世界を支配していた種族の長が世界を滅ぼすことを決めたのだ。自身と少数の選ばれし者だけを残し、それ以外のものを殲滅せんとした。
その種族の長は世界のためにそれを敢行しようと決意した。
絶え間なく増え続ける有象無象。世界の資源を食い荒らし続ける醜悪な存在。争いの種を蒔けばすぐさま金儲けに走る畜生にも劣る下劣な集団。
全てが彼と彼らにとっては目障りで、増えすぎた有象無象を駆逐せねば気が済まなくなったのだ。
ある予言書にある終末。
彼らが信じる教義の一端によって卑しくも同族と勘違いしている者達を地獄に叩き落とそうとしたのだ。
けれど、彼も彼らも知らなかった。この世界には彼らが有象無象以下に見ていた存在の者達が知恵と力を持っていたことを。
「その、世界を支配した種族が人間ってこと?」
長老の語りにアスラのやつが横槍を入れた。
よくこのタイミングで聴けるもんだと逆に感心してしまった。いや、確かにおれも気にはなっていたんだ。どこかオブラートに包み込んでいるというか、昔話みたいな語り口は正直わかりづらい。もっと端的な固有名詞で明確な言葉で言ってもらいたかった。
「そうじゃ。ワシがまだお前さん方くらいの頃の話じゃ」
「そんなに前…っ?」
「ほっ、お前さんならそういう反応になると思っておった」
おれの驚きに対して、長老は愉快げに顔を歪めた。
笑っているというにはどこか茶目っ気がある。長老は敢えてこういう言い方をしてくれたのだとなんとなくわかった。いや、今はそういう見方はいらない。
とにかく、何があったのかを聞いて覚えることが大事なのだ。
「それからだ。あの戦争の最中、ワシらは立ち上がった。ただただ自身の種族のみを考えた闘争。そんなものでこの世界を滅ぼそうという傲慢を打ち砕かねばならなかったからな」
それからの顛末は、長老にとっても苦い思い出だったらしい。
血で血を拭う戦争において、数が少ないのはそれだけで不利だ。長老の親も兄弟も友人も全て殺された。長老が生まれた村の住人も全て虐殺された。
だれもが似たような境遇となった混沌の時代は、数百年続いたと言う。
「その間に、戦争を始めた連中は死ななかったのか…ですか?」
「死ななかった。なるほど、お前さんから見ればやはりそこが気になるんじゃな」
死ななかった。
その事実は明らかにおかしい。人間は数百年生きることはできないはずだ。
そんな当たり前の考えは、
「やつらは己自身を生み出すことに成功したのじゃ。自分ではない自分。大和が言うクローンという存在じゃな」
斜め上の真実で打ち砕かれた。
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