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祭りの後 二

「事情はわかりました。ですが、人間排斥派としての疑いが晴れたわけではありません」

 

「こんな田舎の村にそんな大それた考えを持った者がいるとは思えんがのう」


「事実、誘拐事件が起きましたが?」


「攫われたのはワシらの同族じゃ。人間に危害を加えたわけではない。むしろ、その大義名分を使って自分の主張を通そうとしたのかもしれんの」


「主張?」


「英雄としての待遇。ある意味、ワシの敎育が足らなかったのかもしれんの」


「……相変わらず、食えないおじいちゃんですね」


「はて? ワシは当然のことを言っているだけじゃが?」


 言葉の応酬は主導権の握り合いに終始している。

 おれにとっては、どうあっても誘拐犯の処遇云々に興味はない。人間排斥派とかいうやばそうな連中だってどうでもいいのだ。


 今、おれにとって大事なのはアスラへの《《謝罪》》である。

 

 おれのスキルで無理やりあいつを操った。あの状況を打破するためとはいえ、気を失っていたあいつを強制的に戦わせたのだ。下手をすればあいつ自身が怪我をしたかもしれないし、強制的に能力を引き上げた反動が起きたかもしれない。

 

 なにより、相手の意思を確認もせずにこちらの思い通りに操る行為自体が卑劣そのものだ。

 

 そんな真似をしてしまったあいつに一言の詫びも入れないなんてありえない。あいつがおれを許してくれるかどうかなんてことは別問題だ。しかも、これが二度目というのが問題だった。

 前回はアスラ自身が大怪我を負った。

 謝罪をして許してもらったが、あの時のことは今でも鮮明に思い出せる。

 だから、他人を支配しようなんて真似のクソさ加減は十分理解しているつもりだったのに。

 本当に身勝手なおれ自身が心底気持ち悪かった。


「とにかく、彼らの身柄をこちらに渡してください。こちらでもいくつか聞きたいこともありますし、ここには我ら大和の同胞も暮らしているんですよ?」


「それなら心配無用じゃ。あやつらなら村から追放した。魔法も使えないように《《錠》》を刻み込んだし、悪さも出来んじゃろ。どこへ向かったは知らんが今から追いかければ捕えることは簡単じゃろ」


「…この狸ジジイ」


「狸? ワシらは鬼じゃ」


 どうやら話の決着がついたらしい。

 いや投げっぱなしジャーマンとは恐れ入る。伊藤咲奈はあまりの暴論に頭を抱えながらも、この場で得るものがないと判断したようだった。

 

「では、私は不届者の回収をさせていただきます。…まぁ、本当にこの村を出たというならですが」


「何を言う。この村で子供に危害を加えた大人が生きる場所はないぞ」


 伊藤咲奈は、もう一度長老と無言で向き合った後出ていった。

 まもなく、長老が解散の号令を発した。

 戦士候補生達が外へ向かう中、おれはアスラの元に向かった。

 が、


「トールとアスラはこの場に残りなさい」


 そんな、長老の一声でまた謝罪の機会を逸してしまった。

 

 

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