表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/178

裏切り者 三

「待てっ!」


 制止の声を無視して駆ける。

 とんでもバトルに戦士候補生が意識を向けすぎて拘束が緩んでいたのだ。子供ながら懸命に走り、黒い外套の集団に向かって突撃する…そういうつもりで走っていたのに。

 明らかに遅い。遅すぎる。

 黒い外套の集団は焦った様子もなくおれを見据えている。背後から戦士候補生が追いついてきているのもわかるし、不甲斐ない自分への怒りがどんどん湧き上がってくる。

 

 魔力が欲しい。

 

 魔力があればおれだって戦える。今まで感じたこともなかった焦燥感が全身を包んでいた。おれができることは何もないのに、おれがすべきことはもっと別なことのはずなのに。

 

 集中力が増しているのがわかる。

 

 自分の動き、周囲の動き、全てがスローモーションに感じられた。

 だから、呼吸に意識を集中する。

 ほぼ毎日続けていた行為。坐禅を組まなくとも、それに近い感覚を掴むことができた。あとは結果だ。繰り返した行為を自分の身体に刻み込むことはできたのだ。だから、あとは結果だけなのに。

 

 おれはおれ自身の魔力を感じることはできなかった。

 

 わかっていたことだ。おれには魔力を見ることはできるし、感じることはできる。けれども生み出すことが出来ない。出来るようになると信じていたのに、こんな場面でも出来ないのだ。

 伊藤咲奈の言葉は正しい。

 おれには魔法なんて無理だったのだ。

 こんな大事な場面になるまで、そんな事実を思い知らされるなんてどこまで馬鹿なんだろうか。

 生前もそうだった。

 新しいことを始めるのは苦痛でもなかったし、コツコツやることはむしろ得意だった。でも、新しく始めることが自分に向いているのかと考えたこともなかった。

 惰性で続けることほど無駄なことはない。

 いつだって同じようなことを繰り返して、その事実に満足するだけ。そこから先へ一歩でも踏み出すことが出来ない。

 ここに来てからも同じだ。

 何一つ変わっていない。

 だから、こんな大事な場面でも何もできない。

 

 ()()()?。


「やれ」


 視線の先で火球と水球が生まれた。風が吹き荒れ、地面から巨大なゴーレムが飛び出してきた。黒い外套を纏った集団の魔法。どれも規模としてはたいしたことはない。魔力自体もさほど込められていないのがわかる。

 だからと言って、魔力を使えないおれでは対抗すらできない。

 できない。

 できないからなんだってんだ。


「う、おおおおおおおおっ!」


 叫ぶ。

 理屈なんてもんはとっくにかなぐり捨てた。そうでなきゃ飛び出すことだって出来なかっただろう。結局、やるかやられるか。

 おれは飛来する魔法の数々を前に自分の中にある違和感だけを頼りに駆けた。

 

 

 

【ペコからのお願いです】


・面白い!

・続きが読みたい!

・更新応援してる!


と、少しでも思ってくださった方は、


【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】


皆様の応援が夜分の原動力になります!

何卒よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ