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魔獣 二


「お前ん家、戦士の家なんだろ? 俺ん家もそうなんだ。どっちが強くなるか競争な」


 初めて会った時のことはよく覚えている。歩けるようになってしばらくして、長老の家に招かれた。そこには村の同年代の連中もいて、その中にアスラのやつもいた。

 今から三年ほど前の話だ。

 流石に中身三十代のおれがその輪に入るのは難しく、一線を引いていた時のことである。アスラはガキ大将そのものでやんちゃなイタズラをしては大人たちを困らせていた。ただ誰かをいじめるなんてこともなく、誰かを傷つけるようなことは決してしなかった。

 問題になったのは誰かが戦士の仕事を見たいと言い出したこと。

 ガキ大将であり、家族が戦士だったあいつは大人たちにも黙って集落の外へ出かけた。家族から魔獣討伐の日取りを聞き出し、誰にもバレないようについていこうとしたのだ。

 家族の勇姿を見せつけたいという思惑だったが、結果としてあいつらは魔獣の巣で迷子になった。しかも、魔獣を討伐しようとした家族があいつらを庇って戦闘不能に陥るおまけ付きで。


 その時、たまたまというか、偶然あいつらを助けたのが()()()()()わけである。


「あいつがまたやったとは思えません」


 長老の家を出ると大人たちがすでに集まっていた。

 父と母の姿はまだない。今日は討伐や狩りもないはずだから家にいるので、少し遅れているだけだろう。集落から遠い場所に家があるというのはこういう時不便だ。


 おれの言葉を聞いた長老はおれを一瞥だけして、近くの大人に声をかけた。


「捜索隊を編成する。一班あたり五名で組め。東の山では獣が繁殖期じゃ。足の速いギバルたちを先行させ、捜索を開始せよ。北と南は当番通りで構わん。巡回路を中心に展開せよ。トールはわしと西を探しにいくぞ」


 手早く指示を出し、そのまま西へと向かう。

 大人たちも長老の指示通りに動き出した。おれと長老だけの組み合わせに対して誰も意見しないのは過去の実績があるからだ。というか、長老が強すぎて誰も異論を挟む気も起きないのである。

 

「では、()()()


 おれの返事を待たずに長老は魔力を迸らせた。と、同時に魔法も起動する。

 そこからは一瞬だった。

 長老の言葉通りに空を飛び上がり、おれたちは遥か上空から村を見下ろしている。


「…すげー」


「かか、相変わらず期待通りの反応をしてくれる」

 

 突然の魔法に呆然としたおれを長老は嬉々とした様子で見ていた。

 いや、だって、こんな出鱈目な魔法を体験させられたら誰だってこんな反応になるんじゃないだろうか。そもそも、普段は勿体ぶっているわけだし、おれだって三年前に一度体験したきりなのだからしょうがないじゃないか。

  

「それで、どうじゃ? アスラはどこにおる?」


 長老の言葉はあまりに直接的だった。

 そもそもアスラがどこに行ったかわからないから捜索隊を組んだはずなのに、おれが行く先を知っているかような質問の仕方。

 けれど、


「あそこだ。あの丘のとこ」


 その質問は正しい。

 おれにはあいつの居所がわかるのだ。

 理由は簡単。

 あいつは、おれから()()を受けているからだ。

 債務者の居場所は債権者に筒抜けなのである。

 

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