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最強の戦士


「へー」


「いや、反応薄くないですかっ? え、知らなかったんじゃないですかっ?」


「いや、知らなかったけどお約束っていうかそうなんだろうなーって」


「そんなお約束ありませんよっ!」


 いいリアクションだ。

 相変わらずこういうとこで外さないが羨ましい。

 伊藤咲奈が持ってきた菓子を食べる。うまい。あれだ、前世の世界で食った菓子に近いんだが、ほら、チョコとクッキーの組み合わせたやつ。多分、似たような食材を使っているんだろうが完成度がすごい。なんというか、手作りではなく工場で作られた製品みたいというか。さにあらず、菓子作りのスキルを持った職人が管理する工場で作ったものらしい。工場はもちろん大和所有で、その職人も大和に所属しているらしい。


「とにかく、アグニルさんとシーナさんはすごい人なんです。この村自体特殊ですけれど、あの二人は別格ですよ」


「へー」

 

 身内を無駄に褒められると聞き流すのは万国共通の反応じゃないだろうか。

 おれの反応が芳しくないのが何故か悔しいようで、伊藤咲奈は恨めしそうに睨んでくる。そうか、多分彼女がこの村に滞在するのはおれだけが理由じゃないらしい。おれの両親に対して何かしらの思惑があってのことなんだろう。

 あの時の約束事を律儀に守っているのもそこらへんが理由なんだろうな。


「おれの両親がすごいのはわかったけどさ、伊藤さんは魔力を使えるの?」


「え? ええ、まぁ使えますけど。流石にこの歳になれば覚えはしますが…はっきり言って、使えても使えなくても同じようなものです。彼らのような膨大な魔力量や魔法を理解するための霊性は私にはありませんから」


「霊性? そんなこと長老は言ってなかったけど?」


「そういうものがあるらしいですよ。私にも詳しくわかりませんが大和にいる術師の方が言っていました。詳しい話を聞きたいのであれば連れてきますが?」


「いや結構です」


 なにかにつけて大和との接点を増やそうとするのは勘弁してほしい。

 このやりとりも何度目かわからないくらいやってるので、伊藤咲奈も特に気にした風もなく引き下がった。と、

 

「ただ、まぁ、確かに私も魔力は使えるんですよ。だからというわけじゃないですが、見てあげましょうか?」


 不意に思いついたことのように伊藤咲奈は言った。


「え?」


「あなたの瞑想です。彼らは規格外すぎてあなたの成長が見えないのかもしれませんが、私なら同じ日本人として何かヒントをあげられるかもしれませんよ」


 目から鱗とはこのことか。

 おれは急いで菓子を平らげ、瞑想の準備をする。

 と言っても、特に必要なものがあるわけじゃない。その場で座禅を組んで、呼吸に集中する。ただそれだけだ。

 それだけのことができなくて、おれはこの数年間モヤモヤを抱えたままなのである。


「じゃ、やってみて」


 誰かに見られながら集中するのには慣れている。そういう意味ではあいつらのちょっかいも無駄ではなかった…いや、あれは紛れもなく無駄だった。

 とにもかくにも集中だ。

 呼吸のみに意識を集中し、自分の中に何かが湧き上がるのを探る。普段通りの集中、普段通りの感覚。やはり何かを掴むことなんて。おれには無理なんだろうか。

 そう思考したと同時に、


「わかった。そこまでにして」


 そんな声で集中が途切れた。

 

 『わかった』って言ったか、この女。まさか何がしかヒントのなるようなことを思いついたんだろうか。

 

 おれは期待を込めて伊藤咲奈を見て、


「…透さんは、続けた方がいいと思う。うん、私から言えるのはこれくらいしかないかな」


 何故か不自然なほど動揺しながら、伊藤咲奈は言った。

 いや、続けるのは当たり前なんだからヒントが欲しいんだけど。おれがそう言っても彼女は何も言わずに菓子を食べはじめた。そのまま、お開きとなったのである。


 結局、おれは今日も魔法が使えなかった。

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