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幸せな家庭


「あんた! なんで赤ん坊なんて連れてきたんだい!」


 怒号が飛ぶ。

 実に安直な言葉だったが現状に対して最も適切な言葉だったろう。

 柔らかい感触に包まれながら眠気と戦うおれが思ったのは、そんなどこか人ごと染みた感想だった。そりゃ、自分の境遇に思うところは十二分にある。けれど、思考がいくらしっかりしていたとしても身体が赤ちゃんじゃなにもしようがないのだ。我ながら楽観的な考えだとは思う。思うがそれも仕方がないんじゃなかろうか。


 ほら、おれ一回死んでるし。なんで死んだか知らないけれど。

 

 とにかく、今、この瞬間の心地よさに心を預けることにした。正直、ここまで連れてきてくれた時点で生き残れる算段がついたとの下心もあった。


 いや、だってほら、


「しょうがねえだろ。あのままほっとくわけにはいかなかったんだよ。ほれ、大人しいもんだ。な、かわいいじゃねえか」


 このおっさんがここまで必死に説得してくれるんだから。

 ここに来るまでの間、おれの機嫌をとるために必死で語りかけてくれたのだ。赤ん坊のおれが不安に思わないように必死で元気づけようとしてくれていたのだろう。

 まぁ、普通の赤ん坊であれば何の意味もない行為ではあるのだが。

 生憎、おれは普通の赤ん坊ではなかった。それは、おれが異世界転生したからってだけじゃなくて、


「だからって、うちに連れてきてどうすんだいっ? 村長にはこのことをちゃんと話したのかいっ?」


「話したさ。けど、あいつんとこは五人もガキがいるだろ? 他の連中も似たようなもんだし、だったら見つけたおれがってことで」


「うちだって二人いるでしょうがっ!」


「ほら、こいつ男みたいだしさ。女ばっかりだからちょうどいいかなって」


「意味がわかんないよ! 馬鹿か、あんたはっ!」

 

 言葉がここまではっきりわかるということだ。

 あれだ、多分異世界転生における女神様がやってくれたんだろうか。ほら、よくあるチートスキルとかのひとつとして言葉をわかるようにしてくれたのかもしれない。そうじゃなきゃ、日本語しか知らないおれがこの世界の言葉を理解することなんて出来やしないだろう。

 

「あー?」


 と。

 不意に無邪気な声が聞こえた。

 と、同時に視界に二人の子供が覗き込んできた。

 子供、というより赤ちゃんといったほうがいいだろう。おそらくは今のおれよりも年上の少女達だ。四つん這いの姿勢を取れる時点で別な生き物のようにまで感じる。…いや、角が生えている時点で別の種族か。不思議そうに覗き込む姿はどこか愛らしさを覚えた。


「ほら、見ろ。イーナもジーナも気に入ったみたいだぜ?」


「ったく。ほんと、あんたはいっつも強引なんだから…」

 

 覗き込む顔が四つになった。

 大男の優しげな表情と妻と思しき女性の険しい表情。女性の表情は心底嫌そうに歪んでいたが、徐々に柔らかくなっていくのがわかる。心根が優しい女性なのだろう。当初の予感通り当面の心配はなさそうだ。

 おれはほっとして、


「よろしくお願いします」


 そう言った。

 言ってしまったのだった。

 

「「…しゃべった?」」


 しゃべれちゃった。

 おれは自分が言葉を発した事実に心底驚いたのだった。  


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