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死の行方 十一


 巨人だ。それも複数いる。

 

 炎を撒き散らしながら、迷宮から軍隊の残骸を押し除け、何体かの巨体が這い出す姿が見えた。炎を纏っているが燃えていない。

 《《条件の影響》》だろう。

 つまり、あれは群体を構成する末路わぬ者とは別の存在ということだ。つまり、フレイヤの迷宮に元から存在する怪物なのだろう。だから、敵とは言えない存在のはずだ。


 はずなのだが、明らかに敵意を感じた。

 それも圧倒的な。


 急加速からの急停止。

 ベンテンは急降下を止め、目の前の巨人達と相対する。

 

『やられた。完全に喰われたわよ』


 巨人達から一切視線を逸らさず、ベンテンは言う。

 目の前の現実とその言葉でようやく事態の一端を理解できた気がする。

 

 巨人の外観は常軌を逸していた。

 

 通常のベースとなる素体自体に問題はない。けれど、その肉体の至る所から軟体の触手のような腕が何本も生えている。どう考えてもそんなところから生えないだろうから飛び出している様は、前世のゲームや漫画、アニメでよく見る描写そのものだった。

 

 ゾンビ。あるいは、おぞましいなにかに寄生された姿。

 

 問題は、明らかに末路わぬ者に飲み込まれはずなのに燃えていないことだ。つまり、末路わぬ者が当初とは全くの別物に変質したということだ。

 フレイヤの迷宮の怪物へと変わった。いや、言い方が違う。

 喰われた、とベンテンは言った。

 それは、この怪物達が飲み込まれたという意味ではなく、


 フレイヤの迷宮そのものが取り込まれたという意味なのである。


「嘘だろ」


『嘘じゃないわ。私の炎が効いてないんだから間違いない。多分、他の怪物たちも、いえ、《《迷宮の主人》》すら取り込まれたはず』


「そんな、バカな」


 実感がまるでない。

 長老や伊藤咲奈がいて負けたという事実が信じられなかった。いや、まだこの目で見るまでは信じるわけにはいかないとも思い直す。

 

 そもそも、今、目の前にある現実を越えなければなんの意味もないのだから。


『こうなったら、全てを燃やし尽くすしかないわ。こいつらはそういう存在ものだから』


 魔力の高まり。

 先ほどの一撃よりもはるかに膨大な魔力が注ぎ込まれいてるのがわかる。

 迷宮ごと吹き飛ばすつもりだろう。

 こんな常軌を逸した姿を見れば、おれだってそうすべきだと思う。

 

 けれど、まだフレイヤたちが迷宮内にいる可能性もあるのだ。

 それをさせるわけにはいなかった。


「待って! ダ、ダメだ! まだ待ってくれ、まだフレイヤが、あの中に」


『諦めなさい。まともな姿は見れないでしょうから』


 制止の言葉虚しく、ベンテンは炎を吐き出した。

 衝撃や光は先ほどの比じゃない。特大の爆発音が轟いた後、


『うそ』


 ベンテンが初めて驚愕した声を上げる。

 おれは言葉すら失っていた。


 迷宮どころか巨人まで無事だ。

 そもそも、先ほどの爆発自体の痕跡がまるでなかった。まるで狐に摘まれたような状況だったが、それが誰のせいで起きたのか、おれにはわかってしまった。

 

 いるのだ、目の前に。


 触手を生やし、宙に浮かぶ《《長老》》が。


 その姿を見て、おれは全てを諦めるしかなくなったのだ。

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